神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「…えーっと…?」

「えっ…。な、なんで…。ま、魔導師…様…!?」

は?魔導師?

目を真ん丸にした店員は、俺の顔を見ていなかった。

彼が見ているのは、俺が首からさげているネームホルダー。

そう、そこに入れた銀色の証明書である。

更に、ルイーシュの証明書も続けて見つめ、そして愕然としていた。

な、なんなん…。

「…キュレムさん。俺、今気づいたんですけど」

ルイーシュが、ちょいちょい、と俺の服の袖を引っ張った。

「何?」

「このお店にいる人、全員、証明書が青いです」

…え。

ルイーシュに指摘されて、初めて気づいた。

…ほんとだ。

お粥を啜っているお客も、カウンターの前に座っている店員も、みんな青い証明書を首からさげている。

銀色の証明書をさげているのは、この場で俺とルイーシュだけ。

成程、さっきからじろじろ見られる訳だ。

俺達は、さながら子羊の群れに迷い込んだ狼だったのだ。

それは知らなかった。

ってか、気づかなかった。

どうでも良くね?名札の色が何色だろうと。

青…ってことは…ここにいる人達は、みんな非魔導師か。

一方、俺とルイーシュの証明書は、銀色である。

このお店の中で、俺達だけが魔導師だってことだ。

…で、それが何なんだ?

別にどうでも良いし、関係ないし、他の客と同じように、お粥を売ってくれればそれで良いのだが。

「し、失礼しました…!」

目を白黒させながら、店員さんは慌てて立ち上がった。

「ま…まさか、魔導師様がこんなところにいらっしゃるとは思わず…!」

「…」

こんなところ、ってなんだよ。

ただの飯屋だろ?何処にでもある。

誰が入っても良い場所じゃねぇの?一見さんお断りなのか。

…と言うか、この人。突然敬語になったな。

「…それで、あの…。魔導師様が、こんなところに何の御用でしょうか…?」

また「こんなところ」って言ってるし。

あんたさん、自分の勤め先にもう少し誇りを持てよ。

しかも、「何の御用」と来た。

食べ物を売る店に来てるんだから、食べ物を買いに来たに決まってるだろうが。

他に何をしに来るんだ?

「いや…。表でみんなが食べてたお粥…」

「えっ…?」

「美味しそうに見えたから、一杯もらおうと思ったんだけど…」

「…」

「…」

…そんな、信じられないものでも見るような目で、ぽかんとしないでくれないか。

自分、なんか間違ったこと言ってる?言ってないよな?

「…せめて何か言ってくれよ」

「あ、いえ、あの…」

言葉に詰まる店員。

俺が責め立ててるみたいじゃないか。そんなつもりはないのに。

「えぇと…お言葉ですが、こういった店は、魔導師様の口には合わないかと…」

困り顔で、店員はしどろもどろしながら、そう答えた。

俺の口に合うかどうかなんて、あんたさんが決めることじゃない。

俺の口が決めることなんだが?

「ここは…魔導師様がいらっしゃるような場所ではありませんので…」

「…」

「ですから、あの…」

…これ以上自分達を困らせる前に、さっさと店から出ていってくれ、ってことな?