神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

朝食の後。

俺とルイーシュは、ファニレス王宮を出て、市街地の視察に向かった。

「あぁ、やっと外の空気…」

開放感、半端ない。

王宮の客室…紫水晶の間、だっけ?

あの部屋もめちゃくちゃ広かったが、部屋の中の開放感と、外に出るのとじゃ、訳が違うだろ?

ましてや、あの部屋は盗聴されている恐れもある。

…まぁ、今も誰かに後をつけられている可能性もあるがな。

こうして王宮の外に出てきたの、口で言うのは簡単に言ってるが、凄く大変だったんだぞ。

何が大変って、案内人の男性とのやり取りが。

「あの、王宮の外に散歩しに行っても良いっすか?」

「そうですか。分かりました、では専属のガイドをお付けします」

「いや要らないんで。二人だけで行きます」

「ですが、ガイドがいた方がスムーズにご案内出来ると思いますが…」

「いや、ほんと大丈夫なんで。二人で行きます」

「ですが…」

みたいなやり取りを、何往復もして。

ようやく、渋々ながら納得してくれた後。

「それから、今朝の朝食のことなんだけど…」

「…!お口に合いませんでしたか?」

「いや、そんなことは…。でも、あの…あんな豪華な食事は食べ慣れてないので…。…もうちょっと庶民的で良いって言うか…」

トースト!目玉焼き!コーヒー!以上!…の朝食で、充分。

あんなにたくさんあっても、結局食べきれずに残すことになってしまう。

勿体ないだろ。

「そうでしたか…。申し訳ございません、気が利かず…」

「いや、言わなかったこっちも悪いんで…」

「不自由な思いをさせてしまいまして…」

「…ほんとに。いいんで」

深々と頭を下げる案内人の男性に、こちらも申し訳なくなって。

これらのやり取りだけで、げんなりと、げっそりと疲れ。

なんともいたたまれない気分で、王宮の外に出てきた。

素晴らしい。外の空気。

「はー、この国に来て一晩過ごしただけだってのに、なんかもう疲れた…」

「まだ何も始まってないというのに。前途多難ですね」

「まったくだよ…」

俺らこんなんで、キルディリア魔王国でやっていけんのかなぁ?

元々自信なんてなかったけど、余計気が滅入る感じ…。

…やれやれ。

それでもスパイとして、やるべきことはやらねば。

折角外に出てきたので、まずは王都ファニレスの視察。

気を取り直して、俺はきょろきょろと街の景色を見渡した。

…ふむ。

時刻は、午前9時過ぎ。

これがルーデュニア聖王国の王都なら、通勤、通学に忙しい人々が、忙しく行き交っている時間だ。

一方、キルディリア魔王国の王都ファニレスは…。

「…意外と、人、いないな」

「そうですね」

街の大通りを歩いてるのに、驚くほど、人が少ない。…気がする。

少ない(当国比)。

「やっぱりアレか。戦争の影響かね?」

つい最近まで、アーリヤット皇国と戦争をしてたから…。

国民は我慢せよ!節制せよ!…っていう風潮なのかね?

「でも、戦争はもう終わったじゃないですか。それに、キルディリアは戦勝国ですよ?」

「あ、そうか…それもそうだな」

「無事に戦争に勝利したんだから、もう少し浮かれてても良いような気がしますけど」

「…うーん…」

…確かに。

意外と落ち着いてるように見えるよな…。…今のところ。