神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

ーーーーー…一方、その頃。

ルーデュニア聖王国、イーニシュフェルト魔導学院では。  




マシュリタクシーに乗って、全員揃って、無事にジャマ王国から戻ってきた。

しかも、五体満足で、だぞ。

これはもう、奇跡と言っても良いくらいの大金星だ。

従って…

「ふ…。ふへらはぁおぇ…」

「学院長、大丈夫?」

「足元が…ふらふらして…。ふらふらしてるよ〜…」

千鳥足で、目を回しているシルナのことなんて…。…取るに足らない問題だな。

よし。放っとこう。

そして。

「ナジュ君が無事に戻ってきてくれて、本当に良かった…」

マシュリタクシーから降りた天音は、涙ぐまんばかりに、そう呟いた。

そんな天音に、ナジュはいつもの軽口で答えた。

「大袈裟ですね、天音さんは…。僕は不死身なんだから、どうせ…」

「『どうせ』って言うのやめて。心配してたんだから。僕だけじゃないよ。学院長先生達も、それに生徒達も、君が戻ってくるのをずっと待ってたんだから」

「あ、そ…。…そうですか。…それはまぁ、申し訳なかったと思ってますよ」

珍しく、天音に強い口調で諭されて、ちょっとたじろいでいるナジュ。

それだけ、天音に心配をかけたんだよ。お前は。

反省して、今後は勝手に学院からいなくなるんじゃないぞ。

お前は、このイーニシュフェルト魔導学院に必要な存在なんだからな。

…一方。

「ふぅ。髪が乱れました」

戻ってきたことに関して、特に感慨もないらしいイレース。

千鳥足の誰かさんと違って、確かな足取りでマシュリの背中から降りると。

さっさと手櫛で髪を整え、何事もなかったように、

「さぁ。明日の授業の準備をしなくては」

…あっという間に、通常運転に戻った。

はやっ…。

それから、マシュリも。

パンと手を打って、くるりと一回転。

猫の姿、いろりの姿に『変化』した。

「僕も、そろそろ中庭に行かないと」

「中庭…?」

「生徒がおやつをくれる時間なんだ」

あ、そう…。良かったな。

「今日のちゅちゅ〜るは何味かな…」

舌なめずりをしながら、おやつをもらいに、たたたっと走り出すマシュリ…改め、いろりだった。

今回、マシュリも凄く頑張ってくれたからな。

それに、ジャマ王国まで送迎してくれたし…。

今度マシュリ用に、プラチナ猫缶を買ってきておいてやるよ。

俺が、自腹でな。

乗車賃代わりってことで。

…すると。

「あっ…!!」

「ん?」

一人の生徒が、俺達の近くを通りかかった。

女子生徒だった。

彼女は俺達を…と言うか、令月とすぐりを見つめて、その場に固まっていた。

…ツキナだ。

令月とすぐりが帰ってくるのを、首を長くして待っていた…。

感動の、再会の瞬間である。