神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

10分後。

「戻りましたー」

「おう…お帰り」

「なんかいつもと景色が違うなーと思ったら、ここ、そういえばキルディリア魔王国の王宮なんですよね」

「…」

お前って奴は。

忘れてたのかよ。

「見たことないくらい、良いお風呂でしたよ。どうぞ、キュレムさんも」

「おー…。ちょっとひとっ風呂浴びてくるわ」

まぁ、シャワーで済ませるんだけどな。朝だし。

着替えなどは持ってこなくても、全部クローゼットの中に入れてあった。

ふわっふわの大きなバスタオルも、みんな新品。

すげーな。勿体ないんだけど?

しかも。

「…うほぇあ…」

そのバスルームを見て、俺は思わず変な声が出てしまった。

紫水晶の間、というだけあって。

バスルームのタイルも、壁も、天井も、バスタブも、シャワーも全部、透明な紫色で統一されている。

しかも広い。バスルームだけで、もう俺の部屋と同じくらい広い。

風呂の中で踊れるんじゃね?これ。

逆に落ち着かないだろ。この広さ。

さながら、ラブホテルのバスルームのような…。

…いや、行ったことないから、知らんけど。

なんとも心地よい湯温のシャワーを浴び、キルディリア側が用意してくれた服に着替えた。

「はー…。落ち着かない風呂だった…」

「あ。お帰りなさい。お茶淹れてますよ。…ティーバッグですけど」

俺が風呂から上がると、ルイーシュがマグカップに、紅茶を淹れてくれていた。

「おぉ…悪いな…」

「めっちゃ種類あるんですよ、お茶。ほら。ハーブティー、ローズティー、ハイビスカスティー、ピーチティー…」

ルイーシュは、何種類ものティーバッグがぎっちりと詰まった箱を見せてくれた。

おぉ…。本当だ。

他にもグレープティーとかベリーティーとか、緑茶やほうじ茶や抹茶の他。

いかにも高そうなドリップコーヒー、コーヒー豆、コーヒー豆を挽く為のミルまである。

キッチンにある冷蔵庫には、各種のワインやビール、ウィスキーやブランデーまで備えられていた。

勿論、ソフトドリンクもたくさん揃えてある。

…カラオケのドリンクバーかな?

お茶と一緒にどうぞと言わんばかりに、個包装のパウンドケーキやクッキーやバームクーヘンなどのお茶菓子も、お洒落な籠に入れられて置いてあった。

あ、チョコもある…。…学院長は喜びそうだな。

「…で、ルイーシュは何茶を淹れたんだ?」

「俺は普通の、アールグレイティーですけど」

「ふーん…」

まぁ、これだけたくさん種類があると、逆に迷うもんな。

たくさん種類はあっても、最終的に選ぶのは結局、一番飲み慣れた、一番無難そうな味のお茶を選んでしまう。

これって、あるあるだよな。

「じゃあ、俺のこれも?」

俺は、ルイーシュから手渡されたティーカップを見下ろした。

ほかほかと湯気を立てる、美味しそうなお茶。

「それはパイナップルティーです」

「あぁ、パイナップル…。…って、パイナップル…!?」

…何淹れちゃってくれてんの?

あるの?パイナップルティー。そんなの実在すんの?

そういえば、紅茶にしてはやたらと酸味が強そうな匂いが漂ってるな、と思ってたんだ。

…パイナップルの匂いだ。これ。

「いやぁ、俺も気になったんですけどね。でも変な味だったら嫌だなと思って…」

「俺で実験しようとすんじゃねぇよ」

「どうですか?美味しいです?」

「…ったく…」

ずずず。

…うん。

「…意外と悪くないぞ?」

「本当ですか?それじゃ、次は俺もそれを飲もう」

パイナップルの、甘酸っぱい風味があって…意外と美味しい。

マジか…。パイナップルティーって、割とアリだな…。