神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

さて、いよいよ。

「到着致しました。ここが、ファニレス王宮です」

「…」

ようやく、王都ファニレスにある、ファニレス王宮に到着。

…ついに来ちゃったか…。

俺は、きょろきょろと周囲を見渡した。

…罠とかないよな?

油断させてから来る、ってことも有り得る。

イシュメル女王の狡猾さは、俺もよく知るところだな。

「さぁ、どうぞこちらに。王宮に客室をご用意しております」

「客室…」

本当に、お客様待遇じゃないか。

「すぐにイシュメル女王に会えるんですか?」

ルイーシュが尋ねた。

おぉ。それは重要だぞ。

「いえ。イシュメル女王は現在、アーリヤット皇国との戦後処理の為にご多忙の身なので…」

「…会えないんですか?」

「しばらく待っていただくことになると思います。女王陛下がお戻りになるまで、一週間ほどかかるかと…」

「あー…。そうですか」

一週間…か。

まぁ、それくらいは待つよ。仕方ない。

「それまで、王宮でご自由にお過ごしください。市内を見物されても構いませんよ」

「あぁ、はい…」

「その時は、ガイドもお付けします。女王陛下がお戻りになるまで、どうぞ、長旅の疲れを癒やしてください」

「…うっす。あざす」

至れり尽くせり、だな。

そりゃどうも。

俺達は、ハリボテ王宮に足を踏み入れた。

案内人曰く、「威厳のある荘厳な」クリスタル王宮の内部は。

中に入ると、何の変哲もない、ルーデュニア聖王国の王宮のそれと、大して変わらないように見えた。

「こちらが、お二人の滞在するお部屋になります」

若い男性は、俺とルイーシュを、向かい合った2つの部屋に連れて行った。

「こちらの紫水晶の間がキュレム様で、向かいの緑水晶の間がルイーシュ様の為に…」

すげー名前の部屋。

しかも、部屋の中がめちゃくちゃ広い。

客室なのに、寝室と、リビングルームと、ダイニングルームと、バスルームと、小さなキッチンまでついている。

寝室には、クイーンサイズのベッドが二つも並んでいる。

おまけに、ゆったりとしたウォークインクローゼットまで。

家かな?

…つーか。

「いや、あの、二人一部屋で充分ですよ」

「え?」

え?じゃなくて。

こんな広い部屋に、一人だけで泊まるのはあまりにも勿体ない。

もう一度言う。あまりにも勿体ない。

…それに、スパイ事情としても。

二人一部屋の方が、集まって話しやすい。

ルイーシュを一人にしたら、それはそれで不安だし。

「どっちだっけ…えぇと、紫水晶の間?だけで充分です」

「…よろしいのですか?二部屋に、それぞれ侍女を3人ずつつけようと、」

「いやいやいや。侍女なんて良いですから。自分の世話くらい、自分でしますから!」

俺等の世話の為だけに、3人もの女性を、しかも俺とルイーシュ合わせて6人も、手を煩わせるなんて。

あまりにも鬱陶し、いや、いたたまれなくて嫌だ。

慣れねーもん。

「そうですか…。…さすがは魔導師様…。…謙虚なんですね」

「いや…そんなことはないと思うけど…」

「分かりました。では、何か必要なものがありましたら、何なりとお申し付けください。女王陛下がお戻りになられたら、すぐお知らせ致します」

「…どーも…」

にっこりと微笑み、深々とお辞儀をしてから。

案内人の男性は、客室である紫水晶の間を出ていった。