神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

その後俺とルイーシュは、「証明書を発行致しますから、しばらく待合室でお待ち下さい」と言われ。

言われた通り、そこで待っていると…。






「…こんにちは。キュレム様とルイーシュ様ですか?」

「はい?」

待合室のソファに座って、待っていた俺達のもとに。

仕立ての良いスーツを見事に着こなした、物腰柔らかな態度の若い男性が、声をかけてきた。

…えーと。

「…どちらさん?」

「申し遅れました。わたくしは、ファニレス王宮から来ました。イシュメル女王陛下の使いの者です」

…なんだって。

「…イシュメル…女王の使いの者?」

「はい。こちらの入国審査官から、『上級魔導師クラスの魔導師様が、亡命を希望している』との連絡を受け…」

あぁ、さっきの女性入国審査官ね。

良かった。ってことは俺達、何とか上級魔導師に認定してもらえるのかも。

「是非王宮に来ていただきたいと思いまして、お迎えに参りました」

「…あ、そうっすか…」

…ビビった。

まさか、王宮からお迎えが来るなんて。

何?そのVIP待遇。

歓待され過ぎて、逆に怖いんだが?

これさぁ、ファニレス王宮とやらに辿り着くなり。

「まんまと来たな、ルーデュニアのスパイ共。バレてないとでも思ったか?」って、周囲を囲まれるオチじゃないよな?

絶望するぞ。

「さぁ、こちらへ。ファニレス王宮までお連れいたします」

愛想良く、にこっ、と微笑む使いの男性。

「…」

俺は、ちらりとルイーシュの方を見た。

そして、男性に聞こえないように、超超超小声で、

「…これ、信じてついて行っても良いと思う?」

と、ルイーシュに意見を求めた。

「まー…。胡散臭いことこの上ないですけど…」

「王宮までまんまと連れて行かれて、ミンチにされるのは嫌だぞ?」

「俺だって嫌ですよ。ミンチじゃなくて…せめてぶつ切りが良い」

どっちも嫌だよ。ミンチでもぶつ切りでも。

「とはいえ、ついていかない訳にはいかないでしょう。…スパイとしては」

「…だよなぁ…」

ここで断る理由も、口実もないし。

これが罠じゃなければ、むしろ、自然に王宮に潜り込む絶好の機会だ。

…ついていかない訳にはいかない。ルイーシュの言う通りだ。

仕方ない…。覚悟を決めるとするか。

「分かりました。行きます」

「はい。ありがとうございます。…では、こちらへ」

愛想の良い、若い男性に連れられて。

俺とルイーシュは、表で待たされていた、王宮に向かう為の専用車両に乗り込むことになった。