神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「天使同士で争うことは、私としても本意ではありません」

智天使ケルビムは、目を伏せてそう言った。

あんたが争うことを望んでなくても、他の二人の三大天使も、同じ意見とは限らないからな。

「何とか、セラフィムとソロネを説得したいと考えていますが…」

「説得ね…。果たして応じてくれるのか?」

「それは…。…分かりません。ですが、これ以上あなた方人間に、迷惑をかけるつもりは…」

…そう言ってもらえるのは、有り難いがな。

でも、争いの渦中にベリクリーデがいる限り。

避けたくても、避けられないことがある。

だから、これだけは言っておく。

「…俺はな、あんたらの内輪揉めなんてどうでも良い」

好き勝手争ってくれ。天使同士で、勝手にな。

「ただ、ベリクリーデを悲しませたり…傷つけたりすることは、絶対に許さない」

それだけだ。俺が言いたいのは。

今度、ベリクリーデを泣かせるような真似をしてみろ。

「今度そんなことをしてみろ…。クロティルダのみならず…智天使ケルビム、お前の羽根も、1枚残らず毟ってやるからな」

「ひうっ…」

ケルビムは、びくっとして震え上がった。

良いか、俺は本気だからな。覚えとけよ。

ハゲ頭ならぬ、ハゲ翼にしてやる。

俺はやると言ったらやるぞ。絶対に。

「こえー…。ジュリスの奴、天使を脅してるぞ」

「罰当たりですね」

うるせぇ。

「だ…大丈夫です。…クロティルダ」

智天使ケルビムは、自らの部下であるクロティルダに声をかけた。

「なんだ」

「聖神ルデスの写し身…。…ベリクリーデさんのことを守ってあげてください。…今度こそ、あなたの望むままに」

「言われなくても」

クロティルダは、きっぱりとそう答えた。

あぁ、そうかい。

それじゃ、もう二度と勝手にいなくなるなよ。

「…それでは、皆さん。またいつか」

言いたいことだけ言って。

智天使ケルビムは、ふわりとその場に羽ばたき。

瞬く間に、煙のように姿を消した。

…帰ったか。

…三大天使を説得、ね。

ケルビムが、セラフィムとソロネを説得して…シルナ・エインリーからも、ベリクリーデからも手を引くと約束してくれれば、それに越したことはないのだが。

果たして…そう上手く行くかどうか…。

…いや、仮に上手く行かなかったとしても。

「…ベリクリーデ」

「ふぇ?」

俺は、間抜けな顔でこてん、と首を傾げるベリクリーデを見つめた。

…お前を、絶対に誰にも傷つけさせはしないからな。