神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

俺達の心配と、不安と、船酔いをよそに。

船は、無事にキルディリア魔王国の港に辿り着いた。

とりあえず、無事に辿り着くことは出来たな。

あんまり船が揺れるから、「これ、沈没しないよな…?」って心配だった。

ちゃんと着いた。良かった。

…って、「本番」はこれからなんだよ。

船から港に降り立った俺達は、そのまま、港に併設されている入国検問所に連れて行かれた。

そこで、入国審査の長い列に並ばされた。

15分くらい待たされて、ようやく俺とルイーシュの番がやって来た。





「はい、次の方。どうぞー」

「…ルイーシュ、いよいよだぞ。俺が先に行くから、上手いこと合わせてくれ」

「はいはい」

…意を決して。

俺は、入国審査官のカウンターの前に立った。

「ようこそ、キルディリア魔王国へ」

「あ、はい。どうも…」

…にこやかな、女性の入国審査官だが。

俺は騙されないぞ。

ジュリスに話を聞いたからな。

相手が「魔導師じゃない」と知ったら、この愛想の良い態度は一変するということを。

「キルディリア魔王国には、ご旅行ですか?」

「いえ…あの、ぼ、ぼうっ…」

「…ぼう?」

「亡命、しに来ました」

「…」

言った。言ってやったぞ。

よく言った、俺。

「亡命させて下さい」

再度、はっきりそう頼むと。

にこやかだった入国審査官が、すっ、と目を細くした。

「亡命…。…あなたは魔導師の方ですか?」

「あ、はい。一応」

「そちらの方も?」

「はい。こいつも、あ、彼も魔導師です」

「では、今ここで証明してもらえますか?」

出た。

キルディリア魔王国の入国審査特有の、魔法実験。

自分が魔導師であるという証明する為に、入国審査官の前で魔法を使わせられると言う。

この時、うっかり「魔導師じゃありません」と言ってしまったせいで。

ベリクリーデちゃんは、キルディリア魔王国で酷い目に遭ったそうだ。

俺達は、その失敗を繰り返す訳にはいかない。

それどころか、俺もルイーシュも、ここで上級魔導師に…。

金色の証明書を、発行してもらわなければならないのだ。

気は抜けないぞ。

「勿論です。…えぇと、俺はマギアシューターなんですが…」

「そうですか。では証明してください」

取り付く島もないって感じだな。

俺は、周囲をぐるっと見渡した。

すると、入国審査のカウンターの横に、花瓶が置いてあることに気付いた。

花瓶には、色とりどりのアネモネの切り花が飾られていた。

…よし。あれを使わせてもらおう。

「あのー…。この花、1輪犠牲にしても良いですか?」

「犠牲?どういう意味ですか。早く魔導師であることを証明してください」

分かった、分かったって。

じゃあ、ちょっとやらせてもらうか。