神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

天使って、もっと傲慢で高慢で、人間のことなんて虫けらの一匹としか思ってないような奴らだと思ってたが…。

…いや、クロティルダも、イーニシュフェルト魔導学院にやって来たというリューイも、全然そんなことはなかったのだが。

だけど、三大天使の一翼ともなると…もっと上から目線の態度だと思ってたよ。

予想以上に腰が低かった。

クロティルダのみならず、クロティルダの上司までもが、こうして天界から降りてきて。

わざわざ、一人の人間に過ぎない俺に、頭を下げる…。

こんなことをされたら、さすがに許さない訳にはいかない…。




「…と、言うとでも思ったか?」

「えっ?」

そんなことじゃ、今回の俺は引き下がらないからな。

「部下…クロティルダの謝罪だけじゃ許されないからって、上司を連れてきても無駄だぞ。そんなの関係ないからな」

「マジかよ…。三大天使に頭を下げられても許さないなんて…。今日のジュリスの頭の硬さ、ダイヤモンド級じゃね?」

「上司が出てきて謝ってるのに、まだ許さないなんて…。タチの悪いカスハラみたいですね」

うるせぇ。黙ってろキュレム。そしてルイーシュ。

俺はそれだけ怒ってるんだ。

カスハラで結構。

「今回の件で、俺とベリクリーデがどれほど…」

と、再度怒りをぶつけようとしたところ。

「…ジュリス、怒ってる?」

「は?」

さっきまで、(忌々しくも)クロティルダの羽根をもふもふしていたベリクリーデが。

今度は、心配そうな顔で、こちらを覗き込んでいた。

「ジュリス、まだ怒ってるの?」

「え?いや…それは…。…うん」

怒ってる…けど。

「そっか。でもクロティルダを怒らないであげて欲しいの」

「…」

「…駄目かな?」

こてん、と首を傾げるベリクリーデ。

…何だろう。

なんつーか…卑怯だよな。

さっきまで、あんなに怒りの炎を燃やしていたのに。

ベリクリーデの一言で…急激に、怒りの炎が沈静化されてしまった。

「…お、おぉ…。うん…まぁ…」

「…ジュリス、まだ怒ってる?」

「いや…。…別に…」

「もう怒ってない?」

「…怒ってないよ」

「良かったぁ」

ほわん、と笑みを浮かべるベリクリーデ。

…毒気抜かれるなぁ…。

「…すげぇ。さっきまで般若のようだったキュレムが、なんということでしょう。ベリクリーデちゃんの一言で、こんなにも丸く…」

「まさに劇的ビフ●ーアフターですね」

うるせぇぞ、外野。

…それに、完全に許した訳じゃないからな。

ベリクリーデに免じて、この場は引き下がってやるってだけで…。

一番迷惑と心配をかけられたベリクリーデでさえ、こんなに簡単にクロティルダを許してるんだぞ?

そのベリクリーデが、「怒らないであげて」と言うんだから…。俺がいつまでも、怒りを燃やしてる訳にはいかんだろ。

…はぁ。

俺は、ガリガリと後頭部を手でかいてから。

「…天使の思惑なんてものは、俺達人間には知ったことじゃないがな…。そのせいで迷惑をかけられると、こっちも穏やかではいられないんだよ」

「…はい、分かっています。申し訳なく思っています」

と、答えるケルビム。

しかも、悪いことに。

今回の…クロティルダの失踪の件は、まだ完全に収束した訳じゃない。…だろう?