神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

広々としたリビングの中に、画用紙を段ボールに貼り付けて作った、等身大のマネキン人形が置いてあった。

しかも、無数に。

マネキン人形は、バンダナらしきものを頭部に巻き、ご丁寧に武器…。

チラシを丸めて作った、細長い棒を片手に握っていた。

…何これ?

俺とシルナが、呆気に取られていると。

俺達の来訪に気づかない、ルシェリート家の面々は。

「てぁーっ!」

「そうだ!上手いぞ、アイナ!」

「せーばい!とーばつ!かくほーっ!」

舌足らずに叫びながら。

アイナは、小さな足でちょこちょこと、マネキンに駆け寄り。

新聞紙を丸めて作った剣(ご丁寧に、刀身に銀色の折り紙が貼ってある)を振りかぶって。

マネキンの頭を、ぺしん、ぺしんと殴打。

アイナの一撃を受けて、こてん、こてん、と次々に倒れるマネキン。

「きゃっ、きゃっ」

それを見て、歓声をあげる、幼いレグルス君。

えーっと…。

…何これ?

やがてアイナは、全てのマネキンを退治して。

「とーばつかんりょー!」

良いお仕事をした、と汗を拭う仕草を見せた。

可愛い。可愛いんだけど。

…でも、何やってんの?

俺とシルナが、呆気に取られていると。

「…むっ?アイナ、新手が来たようだぞ」

アトラスが、俺達が立ち尽くしていることに気づいた。

あ、新手?

「さぁ、次はあちらだ!」

ちょ、アトラス。けしかけないでくれって。

「われこそは、あくをほろぼすゆーしやなり!」

アイナは舌足らずに、正義のヒーローみたいな台詞を叫び。

新聞剣を両手で握って、シルナに襲いかかった。

「せーばい!」

「ひぇぇぇ!?」

反射神経がおじいちゃんのシルナは、突然のことに一歩も動けず。

「せーばい、さんぞくせーばい!」

「いたたたた!ちょ、アイナちゃん。ちがっ、山賊じゃない。私はがくいんちょ…いたたた!」

「きゃっ、きゃっ」

剣を何度も振り被るアイナ。

けしかけるアトラス。

歓声をあげるレグルス。

「いやぁぁぁ!成敗されちゃうぅぅ!」

…で、悲鳴をあげるシルナ。

「やっぱり、悪は滅びるさだめなんだな…」

「ちょっと羽久!感心してないで…いたた!ちょ、アイナちゃん。止めてってば〜っ!!」

「えいっ、えいっ!」

「うわぁぁん!ケーキを届けに来ただけなのに〜っ!!」

シルナ…。

…お前のことは、忘れないよ。