「ふむ…。…やはり、そのことか」
イシュメル女王も、私達に何を言われるか、ある程度予想していたようだ。
…分かってるなら話は早い。
「この度のキルディリア侵攻で、アーリヤット皇国は既に大きな打撃を受けています。今の状態では、最早、例の魔導師保護条約の締結になど関わってはいられないでしょう」
「…それで?」
「キルディリア魔王国の強さ…魔導師の強さは、もう充分に見せつけたと思います。ここがやめ時、ではありませんか」
私はここぞとばかりに、イシュメル女王に訴えかけた。
「学院長先生…。イーニシュフェルトの聖賢者様も、そして我が国の女王フユリ様も、平和を望んでおられます。これ以上の戦争の継続は、兵員と物資の無駄遣いに他なりません」
「…」
「どうか、アーリヤット皇国から手を引いてください。これ以上、罪のない人が犠牲になる前に…」
私の心からの、切実な訴えだった。
この思いがどうか、イシュメル女王に届くことを祈った。
…しかし。
「その件について、おぬしらに指図される謂れはないな」
イシュメル女王の返事は、実に素っ気ないものだった。
「おぬしらがキルディリア魔王国に鞍替えすると言うのなら、おぬしらの意見にも耳を傾けるがな。今、おぬしらはそれを断ったではないか。つまりは何の関係もない、他人じゃ」
「そ、そうですが…」
「他国民の意見など、わらわは聞く耳を持たぬ。これは我が国と、アーリヤット皇国との問題よ。いくら聖賢者殿の使いと言えど…偉そうに口出しするものではないわ」
「…」
…ぐうの音も出ない、とはこのことだった。
「一体…どういうつもりなんですか?世界魔導師保護条約…。あの非人道的な条約の締結を阻止するのが目的なら、それはもう達したはずです」
ここまで、キルディリア魔王国に…魔導師という存在に、「痛い目」を見せられたら。
あの頑固なナツキ様だって、さすがに懲りただろう。
元々あの条約は、ナツキ様にとって、フユリ様への当てつけのような側面が強かった。
ナツキ様とて、本気で、魔導師を世界規模で管理しようなんて考えてはいないはずだ。
聡明なイシュメル女王のこと。そんなこと、彼女だって分かっているだろう。
それでも、まだアーリヤット侵攻を止めないのは…。
「…まさか…。他の目的があるのですか」
「…ふふ」
イシュメル女王は、目を細めて微笑んだ。
何がおかしい。
「おぬしなら分かっておろう。分かっていて、それを止める為にここまで来たのだろう?」
「…」
「最早キルディリアは、無力な島国などではない。それを、大陸の有象無象共に証明してやるわ」
…やはり、間違いない。
イシュメル女王は、本気で…!
「アーリヤット皇国を侵略、征服するつもりか」
無闇さんが、鋭い眼差しでイシュメル女王を睨んだ。
しかし、イシュメル女王は楽しげな口調で、はぐらかしてみせた。
「…はて。その質問に答える義理はないな」
「…」
…そう。その答えだけで充分です。
あなたの考えは分かりました。
「…そこまで覚悟を決めていらっしゃるなら、もう私や…シルナ学院長先生の言葉で、あなたを止めることは出来ませんね、イシュメル陛下」
「その通りよ」
「ですが、これだけは言わせてもらいます」
私は、真っ直ぐにイシュメル女王を見据えた。
イシュメル女王も、私達に何を言われるか、ある程度予想していたようだ。
…分かってるなら話は早い。
「この度のキルディリア侵攻で、アーリヤット皇国は既に大きな打撃を受けています。今の状態では、最早、例の魔導師保護条約の締結になど関わってはいられないでしょう」
「…それで?」
「キルディリア魔王国の強さ…魔導師の強さは、もう充分に見せつけたと思います。ここがやめ時、ではありませんか」
私はここぞとばかりに、イシュメル女王に訴えかけた。
「学院長先生…。イーニシュフェルトの聖賢者様も、そして我が国の女王フユリ様も、平和を望んでおられます。これ以上の戦争の継続は、兵員と物資の無駄遣いに他なりません」
「…」
「どうか、アーリヤット皇国から手を引いてください。これ以上、罪のない人が犠牲になる前に…」
私の心からの、切実な訴えだった。
この思いがどうか、イシュメル女王に届くことを祈った。
…しかし。
「その件について、おぬしらに指図される謂れはないな」
イシュメル女王の返事は、実に素っ気ないものだった。
「おぬしらがキルディリア魔王国に鞍替えすると言うのなら、おぬしらの意見にも耳を傾けるがな。今、おぬしらはそれを断ったではないか。つまりは何の関係もない、他人じゃ」
「そ、そうですが…」
「他国民の意見など、わらわは聞く耳を持たぬ。これは我が国と、アーリヤット皇国との問題よ。いくら聖賢者殿の使いと言えど…偉そうに口出しするものではないわ」
「…」
…ぐうの音も出ない、とはこのことだった。
「一体…どういうつもりなんですか?世界魔導師保護条約…。あの非人道的な条約の締結を阻止するのが目的なら、それはもう達したはずです」
ここまで、キルディリア魔王国に…魔導師という存在に、「痛い目」を見せられたら。
あの頑固なナツキ様だって、さすがに懲りただろう。
元々あの条約は、ナツキ様にとって、フユリ様への当てつけのような側面が強かった。
ナツキ様とて、本気で、魔導師を世界規模で管理しようなんて考えてはいないはずだ。
聡明なイシュメル女王のこと。そんなこと、彼女だって分かっているだろう。
それでも、まだアーリヤット侵攻を止めないのは…。
「…まさか…。他の目的があるのですか」
「…ふふ」
イシュメル女王は、目を細めて微笑んだ。
何がおかしい。
「おぬしなら分かっておろう。分かっていて、それを止める為にここまで来たのだろう?」
「…」
「最早キルディリアは、無力な島国などではない。それを、大陸の有象無象共に証明してやるわ」
…やはり、間違いない。
イシュメル女王は、本気で…!
「アーリヤット皇国を侵略、征服するつもりか」
無闇さんが、鋭い眼差しでイシュメル女王を睨んだ。
しかし、イシュメル女王は楽しげな口調で、はぐらかしてみせた。
「…はて。その質問に答える義理はないな」
「…」
…そう。その答えだけで充分です。
あなたの考えは分かりました。
「…そこまで覚悟を決めていらっしゃるなら、もう私や…シルナ学院長先生の言葉で、あなたを止めることは出来ませんね、イシュメル陛下」
「その通りよ」
「ですが、これだけは言わせてもらいます」
私は、真っ直ぐにイシュメル女王を見据えた。



