神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

イシュメル女王の逆鱗に触れやしないかと、私は内心はらはらしていた。

止めるべきだろうか?

いや、でも、無闇さんの言っている言葉は、私の気持ちを代弁したものでもあった。

「居心地が悪い…じゃと?」

「そうだ。いくらなんでも、魔導師と非魔導師の差別が露骨過ぎる」

「力ある者が重用され、力なき者は淘汰される。自然の理よ」

「そうだとしても、ここまで差別があからさまだと、見ていて気分が悪い。魔法が使えない者を、上から目線で見下ろして満足か?」

はらはら。

無闇さん、分かりますけど。あなたの言いたいことは、よく分かりますけど。

さすがに、そろそろイシュメル女王も気分を害したのでは?

ちらりとイシュメル女王を見ると、彼女は扇で口元を隠し、無表情を装っていた。

目が笑ってないので、多分不機嫌だと思います。

「魔導の才というものは、生まれながらに持ち合わせているものだ。自分の意志でどうにか出来るものじゃない」

「…だから?」

「努力の結果得た才でもない。そんなものを誇って嬉しいか?虚しくなるだけだと思わないのか」

…。…無闇さん。

本当に…その通りですよね。

「お前の言う『力』を以てして、それで他者を抑えつけようとするなら、この地に追放されてきた、遠いキルディリアの祖先達が受けた差別と何ら変わらない。その負の歴史を、もう一度繰り返そうというのか」

「ふむ…。そうか」

頷くイシュメル女王。

「さすがは、聖賢者の弟子達よ。師匠と似たようなことを言いおるわ」

学院長先生も…。

「俺はシルナ・エインリーの弟子ではないがな」

と、無闇さん。

そ、そうですけど。

「…それで?そんなご立派な考えのルーデュニア魔導師が、遥々我が国までやって来て、何の用じゃ?」

イシュメル女王が、私達にそう尋ねた。

「まさか、そんなくだらぬ嫌味を言う為に来た訳ではあるまい?」

くだらない嫌味だなんて…。

…だけど、イシュメル女王の言う通りだ。

私と無闇さんは、何もキルディリア魔王国の政治体制について、文句をつけに来た訳じゃない。

今がチャンスだ。

「…イシュメル陛下、お願いします。アーリヤット皇国から手を引いてください」

長い前置きが終わり。

私は、ようやく本題を切り出すことに成功した。