神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

ーーーーー…令月とすぐりが、『玉響』を足止めしてくれている間。

僕は、ナツキ皇王の匂いを辿って、地下室に向かっているところだった。

…出来れば誰にも見つからず、こっそりナツキ皇王を連れ帰りたかったんだけど。

残念ながら、そうはいかなかったようで。

「いたぞ!あそこだ!」

「捕まえろ!」

王城の衛兵達が、僕の背中を追いかけてきていた。

まぁ、一筋縄ではいかないよね。

ここ、一応王宮なんだし。

女王は不在のようだけど。

僕が地下室に向かうのを食い止めようと、幾人もの衛兵達が、僕を取り囲んだ。

あっという間に、行く手を遮られてしまった。

入り口の警備はザルだったが、この辺りはよく訓練されているようだ。

衛兵達は、全員魔導師なのだろう。

首から、銀色の証明書をさげていた。

成程…あれが、噂の魔導師証明書。

銀色ってことは、一般魔導師なのか。

…しかも。

「…見つけたぞ、侵入者」

僕を取り囲む衛兵の中に、ひときわ目立つ存在が、一人、立ち塞がるように前に出た。

その男が、首に下げているネームホルダー。

そこには、光り輝く金色の証明書があった。

金色…。…噂の上級魔導師か。

「イシュメル女王陛下に仇を成す者は、この手で成敗する…!」

…大した威勢の良さだ。

そして、彼が放つ爆発的な魔力もまた、大したものだった。

さすが、キルディリア魔王国の上級魔導師。

…だけど。

「…ごめん、悪いけど」

僕も、遊んであげる余裕はないんだ。

僕は、自分の魔力を抑えている…賢者の石で作られた指輪を、外した。

途端に、普段は賢者の石で相殺している、禍々しい魔力が。

本来の、魔物としての僕の魔力が溢れ出した。

人間と、ケルベロスのハーフ。

僕の…本来の姿に『変化』した。

その禍々しい姿を見て、キルディリア魔導師達は息を呑んだ。

「っ…!バケモノっ…!」

誰かが、思わずそう呟いた。

…そうだね、バケモノ。

自分でも、そう思うよ。

僕だって、自分のこの姿が嫌いだった。

奪うことしか出来ない、誰かを…大切な人を傷つけることしか出来ない、この罪の姿が。

でも…今は違う。

「…僕達の邪魔をしないで」

この力で、大切な人を守ることが出来るのだから。