そんな取引に応じるか、と。
はねつけてやりたいところだったが。
「…」
俺は咄嗟に返事が出来ず、シルナの顔を見つめた。
アーリヤット皇国の人々には申し訳ないが、どうすべきか、俺は迷った。
なんと冷たい人間だろうか。俺は。
ルーデュニア聖王国の安全が保証されるなら、アーリヤット皇国のことは見捨てても良いんじゃないか、と。
自分でも意識しないうちに、そう思ってしまったのだ。
自分の残酷さに、思わずぞっとした。
しかし、シルナはそんな俺の手を、ぎゅっと握り締めた。
「…シルナ?」
「大丈夫だよ。…君は何も悪くない」
俺の心の内を察したかのように、シルナはそう言った。
そして、改めてイシュメル女王に向き直った。
「…イシュメル女王」
「なんじゃ」
「あなたのことを、信じてあげたいのは山々なんだ。だけど…悪いけど、あなたに何を言われても、信用出来ない」
「…」
キルディリアの女王相手に、「信用出来ない」とは。
最初からずっと険しかったシディ・サクメの顔に、更に皺が寄った。
「どういう意味じゃ」
「信用出来ない…と言うより、何を考えているか分からない、と言った方が正しいかな。あなたは、私と羽久をキルディリア魔王国に幽閉しようとした。『アメノミコト』と組んでナツキ様を捕らえて、アーリヤット皇国を占領した。挙げ句、ベリクリーデちゃんをキルディリア魔王国に攫って連れていった」
出るわ出るわ。
イシュメル女王の、これまでの所業が。
…多いな。
「あなたは、アーリヤット人にとっても、私達にとっても危険な存在だ。何を考えてるか分からない。あなたが善人なのか悪人なのかも、私には分からないよ」
「…」
失礼なことを言われているはずなのに。
イシュメル女王は扇で口元を隠したまま、何も答えなかった。
シディ・サクメは不機嫌そうだったが。
主君を悪く言われているのだから、当然と言えば当然である。
「あなたの目的は何?…一体何がしたいの?」
「…さて、なんじゃろうな」
イシュメル女王は答えるどころか、微笑んで、はぐらかしてみせた。
「おぬしに答える義理はないな。腹黒さに関しては、おぬしもわらわも、そう変わらぬわ」
「…そうかもしれないね」
「じゃが、交渉な応じぬなら、仕方がない。わらわは、おぬしらを…」
…と、イシュメル女王が言いかけた、
その時。
「女王陛下っ!」
「…なんじゃ」
客室の中に、血相を変えたブラマンジュが飛び込んできた。
「アーリヤット皇国の…ナツキ皇王が…!」
それは、俺達にとって。
この下らない争いを終わらせる為の、朗報だった。
はねつけてやりたいところだったが。
「…」
俺は咄嗟に返事が出来ず、シルナの顔を見つめた。
アーリヤット皇国の人々には申し訳ないが、どうすべきか、俺は迷った。
なんと冷たい人間だろうか。俺は。
ルーデュニア聖王国の安全が保証されるなら、アーリヤット皇国のことは見捨てても良いんじゃないか、と。
自分でも意識しないうちに、そう思ってしまったのだ。
自分の残酷さに、思わずぞっとした。
しかし、シルナはそんな俺の手を、ぎゅっと握り締めた。
「…シルナ?」
「大丈夫だよ。…君は何も悪くない」
俺の心の内を察したかのように、シルナはそう言った。
そして、改めてイシュメル女王に向き直った。
「…イシュメル女王」
「なんじゃ」
「あなたのことを、信じてあげたいのは山々なんだ。だけど…悪いけど、あなたに何を言われても、信用出来ない」
「…」
キルディリアの女王相手に、「信用出来ない」とは。
最初からずっと険しかったシディ・サクメの顔に、更に皺が寄った。
「どういう意味じゃ」
「信用出来ない…と言うより、何を考えているか分からない、と言った方が正しいかな。あなたは、私と羽久をキルディリア魔王国に幽閉しようとした。『アメノミコト』と組んでナツキ様を捕らえて、アーリヤット皇国を占領した。挙げ句、ベリクリーデちゃんをキルディリア魔王国に攫って連れていった」
出るわ出るわ。
イシュメル女王の、これまでの所業が。
…多いな。
「あなたは、アーリヤット人にとっても、私達にとっても危険な存在だ。何を考えてるか分からない。あなたが善人なのか悪人なのかも、私には分からないよ」
「…」
失礼なことを言われているはずなのに。
イシュメル女王は扇で口元を隠したまま、何も答えなかった。
シディ・サクメは不機嫌そうだったが。
主君を悪く言われているのだから、当然と言えば当然である。
「あなたの目的は何?…一体何がしたいの?」
「…さて、なんじゃろうな」
イシュメル女王は答えるどころか、微笑んで、はぐらかしてみせた。
「おぬしに答える義理はないな。腹黒さに関しては、おぬしもわらわも、そう変わらぬわ」
「…そうかもしれないね」
「じゃが、交渉な応じぬなら、仕方がない。わらわは、おぬしらを…」
…と、イシュメル女王が言いかけた、
その時。
「女王陛下っ!」
「…なんじゃ」
客室の中に、血相を変えたブラマンジュが飛び込んできた。
「アーリヤット皇国の…ナツキ皇王が…!」
それは、俺達にとって。
この下らない争いを終わらせる為の、朗報だった。



