神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「あの二人には手を焼いたぞ。間者であることを疑ってはいたが、まさか最後にあんなことをして去るとは…」

…アーリヤット皇国領に、ナツキ様生存のビラをばら撒くだけばら撒いて、逃げ帰ってきた件だよな?

あいつらも、大胆なことやるよな…。

「お陰で、こうしてわらわが自ら、反乱の鎮圧に繰り出す羽目になった。まったく、大したことをしてくれたものじゃな」

「それは…。…そのことに関しては、申し訳なかったと思ってるよ」

「ふむ、気にするな。あの二人の本性を見抜けなかった、わらわの責よ」

そうか。謙虚だな。

でも、そういうことなら、こっちも言わせてもらうぞ。

「だけどそっちも、その間に、ベリクリーデを攫っただろ」

それを忘れたとは言わせないぞ。

「なんでベリクリーデを連れ去った?彼女に何をしようとしたんだ」

「そうじゃな…。それを答える訳にはいかんな。内緒じゃ」

と、イシュメル女王は微笑みながら言った。

言えよ、畜生。

「じゃが、これでお互い様ということじゃな」

俺達だって、キュレムとルイーシュをこっそりスパイとして送り込んだのだから。

イシュメル女王だって、こっそりナツキ様を連れ去り、こっそりベリクリーデを連れ去った。 

これでイーブン、お互い様、という訳か。

全然イーブンじゃないけどな。

「ルーデュニア聖王国に侵攻されることを心配しているなら、その心配は無用じゃ」

「なに…?」

「少なくとも今は、キルディリア国軍がルーデュニアに侵攻する予定はない」

…。

「…その言葉を信じろと?」

「信じたくないなら勝手じゃ。だが、掻き回されたくないのはこちらも同じよ」

あぁ、そうかい。

「どうじゃ、聖賢者殿。ルーデュニア聖王国の当面の安全は、わらわが保証してやる」

「…だから?」

「だから、ここは引いてくれぬか。このアーリヤット皇国領は、我がキルディリアが統治する。これ以上、首を突っ込むのは控えてくれ」

「…」

アーリヤット皇国から手を引け。

そうすれば、ルーデュニア聖王国の安全は保証してやる…。

イシュメル女王は、そんな取り引きを持ちかけてきた。