神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「ベリクリーデちゃんでさえ、頑張ってるっていうのに…」

「…どうなんでしょうかね?」

あ?

「彼女の場合、本当は戦争の経験があるのでは?」

「…どういうことだ?いつだよ?」

「さぁ、そこまでは。…すみません、忘れてください。何となくそう思っただけです」

…あ、そう。

まぁ…ベリクリーデちゃんも、色々と謎の多い子だからな。

いちいち詮索しない方が吉、というものだろう。

「俺は別に、特に心配はしてないですよ」

「え?」

「これまで何度となく、ルーデュニア聖王国が危機に見舞われたことはありましたけど。その度に学院長達は、何とか解決してきたじゃないですか」

…それは、まぁ。

…そうなんだけども。

「だから、今回もきっと何とかなりますよ」

「…そんな楽観的で良いのかよ?」

「どっちみち、作戦指揮官に戦力外通告された今の俺達に、何が出来るんですか?」

…何もないな。確かに。

それを言っちゃあ…おしめぇよ。

「だったら、カップ麺でも食べながら、彼らの無事を祈る方が、余程建設的なのでは?」

「…そうか…。…まぁ、そうかもな…」

本当に、いざとなったら。

俺達が潔く、キルディリア魔王国に投降して…スパイの罪を償えば良いだけだもんな。

そのくらい割り切ってた方が、気が楽かもしれない。

「それより俺は、学院の方が心配ですね」

え、学院?

俺達の母校でもある、イーニシュフェルト魔導学院のことだろう。

「…学院の方こそ、何の心配も要らんだろ?だって、イレースちゃんが残って…」

「だから心配なんですよ。今、学院にいる教師はイレースさんだけでしょう?…きっと、学院長がいないのを良いことに、超絶スパルタ授業を行ってますよ」

あっ…。

…やってそう。

鬼の居ぬ間に洗濯、ならぬ。

パンダの居ぬ間に教育大改造、とかやってそう。

「どうします?学院長が戻ってきたら、生徒が全員敬礼して挨拶したり、何かする度に『願います!』とか言ってたら…」

軍隊か、刑務所かな?

だが…あのラミッドフルスの鬼教官なら、やりそう。

あながちやりかねん…と、思ってしまうのが恐ろしいところ。

後輩達が…俺とルイーシュの後輩達が、軍人さながらの魔導師に…。

…。

「…つくづく、俺達、イレースちゃんがイーニシュフェルト魔導学院に来る前に卒業しておいて良かったな…」

「まったくですね」

自分の人生で、「幸運だな」と思ったことなんて、片手で数えられるくらいしかないけど。

イレースちゃんが、イーニシュフェルト魔導学院の教員になる前に、学院を卒業しておいて良かった。

…これだけは、俺の人生で大きな幸運だったと言わざるを得ない。

「…なんか心配になってきたから、これ食べ終わったら、学院の様子、見に行ってみるか?」

「良いですよ。ひまつぶ…いえ、母校への訪問も、OBの大切な役目ですもんね」

「お前今、暇潰し、って言わなかった?」

「気の所為ですよ」

そうか。

気の所為だってんなら…仕方ないな。