神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

ずぞぞー、とコンポタ麺を啜る。

口の中がパニックを起こし、拒否反応を起こすことを覚悟していたのだが。

……ん?

お?

あれ?

「…どうですか?キュレムさん。コンポタラーメンは」

「…意外と美味い…」

「ほほう」

意外と、なんて言ってごめんな?

でも、マジで…意外と、美味い。

まろやかな甘さが、麺にとろりと絡みつく。

また、スープに溶け込んだコーンの粒が、良いアクセントになっている。

「…って言っても、ラーメンじゃないな」

「まぁ、ラーメンっぽくはないですね」

どっかで食べたことある味…。そう、アレだ。

ラーメンじゃなくて、カルボナーラに近い味。

そう思えば、そんなに悪くない一品だと思う。

もう一回リピートしよう、とは思わんがな。

「何だか、キュレムさんがへこんでるみたいだったので」

「ん?」

「学院長の理論で言うと、悩んでる時は甘いものを食べるのが一番らしいので。出来るだけ甘そうなカップ麺を買ってきました」

「…ふーん…」

…一応、ルイーシュなりの気遣いだったんだな。

でもな、甘いもので悩みが解決するのは、学院長だけだから。

「今日は何に悩んでるんですか?」

いつも何かに悩んでる、みたいな言い方をするんじゃない。

「悩みっつーか…。…学院長達、大丈夫かなーと思って…」

「あぁ…。…やっぱりそれ、気になっちゃいます?」

「なるだろ、そりゃ…」

…アーリヤット皇国の領土に、ビラをばら撒いた…あの行為に関しては、自分が間違っていたとは思わない。

だってあの時は、それ以外考えられなかったんだもん。

何回やり直したって、あの時は同じことをしただろうと思う。

だから、後悔してる訳じゃないんだが…。

「…やっぱり、俺らも行った方が良かったんじゃないかな?」

…と、思ってしまうのだ。

ナジュは、「戦争の経験者がある者のみ」って条件を出して。

生粋のルーデュニア人で、温室育ちの俺とルイーシュは、さっさと条件から外されてしまったが。

…でも、つい先日まで、スパイとしてキルディリアの懐に入り込んで。

そのキルディリアの懐を、引っ掻き回すだけ引っ掻き回したのは、他でもない俺達だ。

…それに、イシュメル女王は、俺とルイーシュに対してお冠なんだろ?

俺とルイーシュの身柄を差し出せ、って言ってきてるんだろ?

あの女王に捕まったら、一体どうされることやら。

女王をずっと騙してたのは俺達なんだから、俺達が罰を受けるのは、それは当然って言うか…自業自得だろ?

それなのに…。

当の俺達はこうして、ルーデュニア聖王国で、ぬくぬくと…カップ麺なんか食ってる。

おかしいだろ。

自分のやったことのツケ…その尻拭いを、学院長達に押し付けてしまったようで。

なんか、こう…もやもやするんだよ。

ということを、ルイーシュに説明すると。

「…そうは言いますが、仕方ないじゃないですか。今回の作戦指揮官はナジュさんで、そのナジュさんが、俺達を足手まといだからついてくるな、って言ったんですから」

足手まといだから、とまでは言ってないだろ。

ただ、今回ばかりは、戦争経験者以外は頼りに出来ないから、ってだけで…。

…それに。

「ジュリスはともかく、ベリクリーデちゃんは、戦争の経験なんてないだろ?」

そのベリクリーデちゃんが、ジュリスの付属品的な扱いとはいえ、戦場のど真ん中に突っ走ってるのに。

事件の渦中にあったはずの俺達がこうして、ぬくぬくのうのうと過ごしてるのはな…。

…情けない、って思わないか?