神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「ふふ。凄いでしょ?私と無闇君の新技なんだよ」

と、月読は得意げに、胸を張って言った。

「あぁ…。凄いな、これどうなってるんだ…?」

「これを見ると誰もが、ジュリス、今のお前と同じような反応をするんだ」

え?

「俺達の目的は殺人じゃない。だからこうして、見せかけの炎で『脅し』をかけている」

「これを見ると、みんな面白いように逃げていくんだよねぇ。触っても全然平気なのに」

…それは。

俺達は無意識に、本能的に、炎を見ると「熱い」、「触ってはいけない」と思って、逃げようとする。

実際のところ、無闇の黒い炎は、先程も実践してくれたように、かなり威力を絞ってあるので。

見た目は派手だが、触っても全然害はない。

…成程。非常に効果的な脅しだ。

この見せかけの『火攻め』で、デモの為に集まったアーリヤット人と、それを鎮圧しようとしているキルディリア軍人も、同時に蹴散らす。

それが、ナジュが考案した『炙り出し』作戦…。

…えげつないこと考えるなぁ。

「勿論、それは褒め言葉ですよね?ジュリスさん」

俺の心を読んだらしいナジュが、得意げに言った。

…あぁ。うん、褒め言葉だよ。

「だが、功を奏しているようだぞ」

そうなのか。

「今のところ怪我人は、転んで膝を擦りむいたとか、逃げる途中で慌てて足を捻ったとか、その程度で済んでる」

「そうか…」

そのくらいなら、回復魔法を使うまでもないな。

出来るだけ犠牲を出さず、という大原則に則っている。

クュルナにしても、無闇にしても…。

…ん?ちょっと待て。

「ナジュ、お前…。クュルナと無闇には作戦を指示してるのに、俺には何も言わないのは何でなんだ?」

俺、そんな作戦指示は聞いてないぞ。

「あぁ、あなたに関しては、何も言わなくても上手いことやってくれると思ったので」

ナジュはけろっと、とんでもないことを言った。

…おいおい。

「事実、怪我人を出さずに制圧してくれたようですしね」

「…あのな…」

信用してくれるのは嬉しいが。

…それは過信というものだぞ。

「それじゃあ皆さん、この調子で、どんどんキルディリア国軍を撃退していきましょう」

ナジュは微笑みさえ見せて、余裕の表情である。

…まったく。この図太さ、いや、この胆力よ。

シルナ・エインリー…。あんたは、とんでもない人物を指揮官に選んだようだな?