神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

そして、建物を取り囲んでいたキルディリア軍は。

手に持った杖に、次々と、瓦礫の破片や、炎魔法で作った火球を出現させ。

それを一斉に、アーリヤット人が立てこもるビルに向かって放とうとした。

…まったく、この血の気の多い奴らだ。

「ジュリス…!」

ベリクリーデが、焦った表情で俺に縋った。

「分かってる」

この馬鹿げた争いを終わらせるのが、俺の役目だ。

俺は、自らも杖を取り出し、ビルの前に立ち塞がった。

「earricadb」

ビルの全体を守るように、魔力で作った障壁を展開。

一斉に放たれた全ての攻撃を、まとめて全部防いでみせた。

「…!?何者だ…!?」

狼狽えるエリトール。

…思い出したよ、お前。

エリトールって名前…。キュレムとルイーシュから聞いた。

あんた、ルイーシュの専属見習い魔導師だったんだって?

上級魔導師の見習いだけあって、なかなかの魔法の冴えだが…。

…でも、そんな頭でっかちの考え方じゃ、大成しないぞ。

「お前ら…いい加減にしろ。やって良いことと悪いことの区別もつかないのか?」

このビルに立てこもってる、大勢のアーリヤット人を虐殺するつもりか。

そんなことして、一体何になる?

より一層、アーリヤット人の反感を買うだけだ。

「なんだ、お前は…!邪魔をするな、そこを退け!」

エリトールは杖を構え、怒声を浴びせて、こちらを威嚇しようとした。

すると。

「駄目だよ」

ベリクリーデが、俺の隣にずいっと出てきた。

お、おぉ?

「ベリクリーデ。危ないからさがっ…」

「ジュリスにも、この建物の中にいる人にも、酷いことをしちゃ駄目だよ」

…どうやらベリクリーデなりに、エリトール達を説得しようとしているらしい。

「そいつらは国賊だ。庇い立てするな!」

「…??こくぞく、って何?」

ごめんな。

ベリクリーデ、国語が苦手なんだよ。

「えっ…?そ、それは…キルディリア総督府に逆らった、反逆者ということだ!」

「なんで?なんで反逆者だったら、酷いことをしても良いの?」

「そ…れは…」

「酷いことをされたからって酷いことをしたら、もっと酷いことになるよ?」

「…」

…すげぇ。

ベリクリーデ、完全論破。

幼稚園児並みの純真無垢さで、汚い大人を黙らせたぞ。

しかし、エリトールが「ぐぬぬ…」となっていたのは、一瞬のことで。

ベリクリーデの子供じみた正論に、ついに業を煮やしたのか。

「えぇい、うるさい!黙れ!お前の言い分など知ったことか!」

あぁ…もう、ブチギレだよ。

「そこを退け!退かないなら、まとめて消し炭にしてやる!」

「…??けしずみ、って何?」

「…ベリクリーデ。ごめんな?悪いけど、ちょっと黙っててくれるか」

これ以上、余計にエリトールを怒らせないでやってくれ。

力加減を間違えてしまうよ。

「この馬鹿は、俺が一発ぶん殴って落ち着かせるから」

「ジュリス、頑張れ〜」

「あぁ」

俺は、再度強く杖を握り締めた。

…さてと。じゃ、血気盛んな若者に、拳骨をお見舞いしてやるとするかな。