神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

変装の効果は絶大だった。

僕も、令月も、すぐりも、誰にも疑われることなく。

キルディリアの魔導師に成りすまして、あっという間にファニレス王宮に到着した。

一見すると、きらびやかなクリスタルの王城だが…。

「変な感じだね、これ。作り物みたい」

「実際、作り物らしいじゃん?学院長せんせーと羽久せんせーが言ってた」

「情けないね。こんな目眩ましで騙されるなんて」

「滑稽だよねー」

言いたい放題の元暗殺者達である。

子供は残酷だよね。思ったことを素直に口に出すからさ。

「…で、どう?マシュ…いや、今はいろりか。ナツキ皇王の匂い、する?」

と、令月が小声で、僕に聞いてきた。

猫が喋ってるところを見られる訳にはいかないから、くれぐれも小さな声で話さないとね。

不便だけど。

「…うん、する。多分、地下の方だな…」

「そう。まだ殺されてなかったんだね」

そうみたいだね。

アーリヤット人の反乱を受けて、ナツキ様が処刑されてしまわないか、実は心配だったんだ。

だけど、こうしてナツキ皇王の気配…匂いがするってことは。

まだ生きてるってことだ。…かろうじて。

ただし、いつまで生かしてもらえるかどうかは分からない。

今のナツキ皇王は、人質だ。

いつ殺されてもおかしくない。

だから、殺される前に救出しなければならない。

さぁ。それじゃ行こうか。

「僕はこのまま、猫の姿で、こっそり塀を越えて侵入するけど…。…君達はどうする?」

「ん?別に、だいじょーぶだよ」

…そうなの?

何処から入るつもりなんだろう、と思っていると。

令月とすぐりは、平然と、すたすたと王宮の正面入り口に向かった。

そこには、銀色の証明書をぶら下げた、いかめしい顔つきの門番が二人、立っていたが。

あろうことか、令月とすぐりは、その門番の前にすたすたと歩き出て。

「お疲れ様」

「どーもー」

まるで旧知の仲みたいに、笑顔で軽い挨拶をして、門番の前を通過した。

「…??お、お疲れ様です…」

門番は狼狽え、首を傾げながらも。

まさか、白昼堂々、侵入者が正面入り口から、普通に入ってくるとは思ってなかったのか。

特に咎めることなく、そのままスルーしてしまっていた。

…。

…あまりにもあっさり、侵入成功しちゃったよ。

…それじゃ、僕も便乗しようかな。

「…にゃー」

「あ、猫だ…」

猫の姿で、たたたっ、と正面入り口を駆け抜ける。

侵入成功。

充分に、門番と距離が離れてから。

「…君達、度胸があるね」

「まー、こーゆーことには慣れてるからね」

「堂々としてたら、意外とバレないものだよ」

本当だね。

ファニレス王宮の警備、こんなんで大丈夫?と心配になるけど。

よその国のことだから。余計な心配はやめておこう。