神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

アトラスの…その気持ちは有り難いのだが。

「アトラス…。残念だが、今回は…お前はシュニィの役には立てないと思うぞ」

俺もシルナも言い難かったことを、代わりに言ってくれたのはジュリスだった。

「むしろ、今回ばかりは足手まといになりかねな、」

「何故だ!?俺では力不足だと言うのか…!?」

「ちょ、凄むなよ。別にお前が非力だとは言ってねーよ」

本当に非力だったら、ドアを破壊して入ってきたりしないだろ。

「…どうだ?ドア、無事?」

「いえ。レールが曲がってますね」

「マジかよ。ドアなんて、どうやったら一撃で破壊出来るんだ?」

キュレムとルイーシュが、アトラスの破壊した会議室のドアの修理を試みていたが。

無理そう。

しかもアトラスは、自分が扉を破壊したことなんて、全然気づいていない。

「そうですね…。確かにジュリスさんの言う通り、アトラスさんは来ない方が良いと思います」

「シュニィまで…!…何故だ…?」

妻であるシュニィ本人にまで拒まれ。

アトラスは、その場にがくん、と膝をついた。

この世の終わりみたいな顔で。

「俺は…俺では、シュニィの力になれないと言うのか…」

「…違いますよ、アトラスさん。ちょっと落ち着いてください」

「くっ…。俺に…俺に、もっと力があれば…!」

「…大丈夫です。充分助かってますから」

普段は、これでももう少し冷静なんだけどな。

シュニィのこととなると、途端にコレだよ。

呆れたジュリスが、説明を試みた。

「あのな、そうじゃなくて…。キルディリア魔王国は、魔導師の国だから…」

「?それが何なんだ」

「外国人であっても魔導師じゃない人間は、まともに相手にされないんだ。シュニィは魔導師だが、お前は魔導師じゃないだろ」

「…!」

そう、それなんだ。問題は。

アトラスの力量はまったく疑ってない。

むしろ、シュニィとアトラスが組めば、この場にいる誰よりも強く、頼りになることは分かってる。

だけど…それは、ルーデュニア聖王国での話だ。

キルディリア魔王国では…アトラスの存在は、恐らく最も嫌われる部類に入るだろう。

アトラスは、魔導師ではないから。

…理不尽だよな。

魔導師じゃなくたって、同じ人間なのに。

「お前がキルディリアに行っても、多分シュニィの力にはなれない。むしろ…魔導師じゃないお前がいたら、シュニィの足を引っ張ることにもなりかねない」

「…そんなことは…」

「憶測で言ってるんじゃない。経験したから言ってるんだ。あの国じゃ、非魔導師は人間扱いされないんだよ」

「…」

ジュリスは、きっぱりとそう言った。

…そういえば。

ジュリスとベリクリーデが、キルディリア魔王国に潜入した時。

ジュリスはオレンジカード…魔導師の旅行客用の証明書をもらったそうだが。

ベリクリーデは、非魔導師として…「青カード」として入国したらしく。

そのせいで、非常に理不尽な扱いを受けたと聞いた。

「…」

俺は、ちらりとベリクリーデの方を見た。

ベリクリーデは全く会話に入ってこず、熱心にお絵描きを続けていた。

…良かった。キルディリアでの嫌な体験を思い出して、傷ついている様子はなさそうだ。

だが、ジュリスはその時の苦い経験を忘れていない。

だからこそ、アトラスを同じ目に遭わせないよう、忠告しているのだ。