神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「まぁ落ち着きましょうよ、キュレムさん」

「落ち着いてられるかよ…。処刑されるなら、せめて痛い方法はやめてくれ」

涙目のキュレムである。

「ルイーシュ、何でお前はそんなに冷静でいられるんだ?」

「え?だって…いざとなったら、異空間に高飛びして逃げれば良いだけですし」 

さすが。超有能空間魔法使い。

本気でルイーシュが異空間に逃げたら、イシュメル女王でさえ、と言うか。

俺やシルナ・エインリーでさえ、見つけることは出来ないだろう。

「畜生、薄情者!その時は俺も連れてってくれ!」

またしても、涙目のキュレムである。

その時は…まぁ、さすがにルイーシュも、一緒に逃げてくれるんじゃないのか?

何だかんだ言って、キュレムとルイーシュは、互いに信頼し合ってるからな…。

しかし。

「異空間に高飛びする必要はないよ」

シルナ・エインリーが、きっぱりと教え子達に言った。

「へ?」

「そうなる前に、私達がイシュメル女王を止めてみせるから」

「…」

…成程。そういうことね。

あんたが言うなら、説得力もあるってものだ。

「ひいては、共にアーリヤット皇国領に行き、キルディリア魔王国軍と戦ってくれる『戦友』を募集しに来ました」

と、ナジュが言った。

「戦友」…。

「今回僕は、学院長自ら、作戦指揮官に任命されました。戦場では、僕の指示に従ってもらうことになります」

「何でお前なんだ?」

「僕が一番、魔導師と非魔導師の戦争を長く経験したからです」

あぁ、そういうことか。

…そういや、そうなんだったな。

「…分かりました、そういうことなら」

シュニィが頷いた。

「私も協力します。学院長先生や羽久さん達と一緒なら、誰が相手でも…」

「シュニィが行くなら、俺も行くぞ!」

真っ先に立候補したのは、このシュニィとアトラスだった。

アトラスなんて、意気込んで、くまのぬいぐるみを旗のように掲げて宣言している。

…何だろう。勇ましくて、そして頼もしいはずなのに。

くまのぬいぐるみのせいで、全然格好がつかない。

むしろ滑稽。

「ありがとうございます、シュニィさん。アトラスさん。…でも、あなた方はお留守番です」

「えっ」

「何っ?」

意気込んでいたところを、思いっきり出鼻挫かれたな。

「勘違いしないでくださいね。実力がどうこうという問題じゃありません。…僕が今回重視するのは、『戦争の経験』ですから。未経験者は応募不可です」

…成程。

厳しいことを言うようだが…。確かに、今回はシュニィとアトラスじゃ、役不足だろうな。

シルナ・エインリーが、戦争経験者のナジュを指揮官に選んだのは賢明だったと、そう言わざるを得ない。

「…どうやら、あなたは分かってくれてるようですね、ジュリスさん」

「…あぁ、そうだな」

ナジュは俺の心を読んで、察してくれたようだ。

今日日、世の中の就職情報雑誌には、「未経験者歓迎」なんて文言が当たり前のように並んでいるが。

「戦場」という職場においては…。経験者でなければ、お断りだ。