神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

すると、シュニィが先手を打つように。

「…アーリヤット皇国とキルディリア魔王国のことですか?」

ナジュに、そう尋ねた。

賢明なシュニィは、突然呼び出された時点で、大体その内容を察していたようだ。

「はい、そうです。…えぇ、あなたの想像通りです」

「そうですか…。やはり…」

俯くシュニィ。

…おい。二人だけで話を完結させないでくれ。

アーリヤット皇国と…キルディリア魔王国?

キュレムとルイーシュから、話を聞くところによると。

ナツキ皇王の生存を知ったアーリヤット皇国民が、魔導師・非魔導師の垣根を越えて手を組み。

各地で反乱を起こして、ナツキ皇王の身柄の返還を要求している…とのことだが。

「その事態に収拾をつける為に、キルディリア魔王国軍が動きました」

「っ、何?」

俺の心の中を、いち早く読んだナジュが説明した。

「キルディリアに拘禁しているナツキ様を人質に取り、アーリヤット皇国民を武力で弾圧するつもりのようです」

「…あの女…」

イシュメル女王、とか言ったか。

あの女は、魔法というものを、武力としてしか見ていないのか。

ご自慢の魔法は、他者を抑えつける為だけに使うものなのか。

「このままじゃ、再びアーリヤット皇国とキルディリア魔王国との戦争が始まってしまう。…しかも今度は、無関係の国民を巻き込んだ戦争が」

と、シルナ・エインリーが言った。

珍しく、至極真面目な顔だった。

それはもう…。…武力による弾圧、だな。

無分別な…人と人との戦争。

そんな惨劇が…今、まさに始まろうとしている。

「フユリ様は、それを止めて欲しいって言ってるんだ」

今度は、羽久・グラスフィアが口を開いた。

「これ以上、犠牲を出さない為に…。それに、ひいては、ルーデュニア聖王国を守る為にも」

「…そうだな…」

アーリヤット皇国が落ちれば、必然的に、次はルーデュニア聖王国だ。

ルーデュニア聖王国の国土を守る為にも…アーリヤット皇国という、「防波堤」は必要だ。
 
という実利も兼ねているが、実際のところ、フユリ女王は。

これ以上、アーリヤット皇国の民が傷つくことに耐えられない。

そして…兄の命を人質に取られていることに耐えられない。

これが本音だろう。

…ったく、誰も彼も…この国の連中は優し過ぎるんだよ。

「…全面的に同意しますよ、ジュリスさん」

俺の心を読んだナジュが、小さく呟くように言った。

そうかい。

「それから、ついでに…キュレムさんとルイーシュさんも」

「あ?何?」

「『めんどくさいなー。よその国のことだし、わざわざ首を突っ込む必要ないんじゃね?』と思ってるところ、申し訳ないんですが…」 

「おい。余計なことまで言わなくて良いんだって」

そんなこと思ってたのかよ。

まぁ…その意見も分かるけども。

「他人事じゃないんですよ。イシュメル女王はルーデュニア聖王国に、スパイとして潜入していた、お二人の身柄の引き渡しを要求してるんです」

「ひぇっ?」

「キルディリア魔王国に引き渡されたら…お二人共きっと、豚箱にイン…どころか、公開処刑モノですね」

「マジかよ!」

これは他人事ではないと知って、青ざめるキュレム。

と、

「まぁ、あの女王ならやりかねませんね」

意外に冷静なルイーシュ。

スパイとして潜入した時点で、その覚悟はしていたんだろう?

「やべぇ、俺…。イシュメル女王に殺される。打ち首だ、車裂きだ、鉄の処女だ…!」

頭を抱え、自分が処刑されるところを想像しているらしいキュレム。

…えーと。大丈夫か?

「…??ジュリス、てつのしょじょ、って何?」

「…お前は知らなくて良いことだよ、ベリクリーデ…」

首を傾げるんじゃない。