神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

ーーーーー…天音さんが、すぐに皆を学院長室に集めてくれた。

深夜だと言うのに。

「すみませんね、こんな時間に呼び出して」

迷惑だとは思ったんですけど、今は一分一秒を争う状況なので。

「いや…いいよ。どうせ、眠れないところだったし…」

と、羽久さん。

「うん…。私も眠れなくて、気晴らしに夜食のチョコを食べてたところだったんだ」

と、学院長。

「それはいつものことだろ」という、この場にいる全員の心の中で、まったく同じツッコミが炸裂していたが。

まぁ、それは言わないでおいてあげますよ。

非常事態ですからね。

「と言うか…この状況じゃ、誰も眠れないだろ」

「うん…。僕も起きてたし…」

羽久さんが言い、天音さんが同意して。

「僕は元々、眠る必要はほとんどないからね」

マシュリさんが、そう言った。

眠る必要ないって、なかなか便利ですね。

いや、待て。眠る時間がなかったら、精神世界に行ける時間が。

つまり、リリスに会える時間がなくなるので、やっぱり僕は寝ます。

睡眠万歳。寝る子は育つ。

一方。

「私は寝てましたよ」

「え?」

ただ一人、この場でイレースさんだけは。

世の中の状況がどうであれ、関係なく眠っていたらしい。

それを途中で起こされたことで、若干不機嫌そうだったが。

イレースさんは、機嫌良く振る舞ってる時の方が珍しいですからね。

言ったらシバかれるから、言いませんが。

こんな状況でぐーぐー眠れるなんて、なんて図太い…と、思われるかも知れないが。

イレースさんの場合、そうではなく。

「眠れる時に眠っておかないで、どうするんです。事態がどう動くか分からない状況だからこそ、休める時に休んでおくべきです」

うーん。ド正論。

戦場ではその考え方、凄く重要なんですよ。

気が高ぶるのは分かりますが、人間、いくら興奮していても、眠れずに動き回れる時間には限界がある。

気を張って何とか起きていても、どうしても、パフォーマンスはどんどん低下していく。

ですが戦場では、やはり、満足に睡眠を取ることも難しい場合がある。

だからこそ、束の間でも、落ち着いて眠れる時間の余裕は貴重。

休める時にしっかり休んでおくことは、戦場において、非常に重要なのである。

さすがイレースさん。神経がずぶと、いや。

合理的な判断ですね。

…一方。

「…あなた達は、相変わらず深夜でも元気ですね」

「まぁねー。俺と『八千代』は夜行性だから」

「むしろ、夜の方が身体がよく動くよ」

こちらもまた、イレースさんに負けず劣らずの図太さを、いや。

大人顔負けの胆力を持つ、元暗殺者組の令月さんとすぐりさん。

この二人、いつ見ても起きてるんですが。

一体いつ寝てるんでしょうね?

「戦場に持っていく武器の準備と手入れ、糧秣や衛生用品の調達…」

「それに、俺達がしばらく学院を空けるなら、今のうちに畑の手入れもしとかないといけないしねー」

「やることがたくさんあるね」

…こんな時くらい、畑仕事は休んでは?と思いますが。

この二人にとっては、大事なことなんでしょう。

戦支度と、畑の手入れ。

何だか両極端で、こんな状況でも、笑っちゃいそうになりますね。