神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

ナジュ君が一番の適任…。学院長先生の言うことはもっともだ。

皮肉なことだけど…ナジュ君が一番、僕達の中で「戦争の経験」がある。

だからこそ、ナジュ君に指揮権を委ねた。

その判断は間違っていない…と、僕も思う。

だけど、それがナジュ君の意に沿うかどうかは、また別の話だ。

ナジュ君が重圧に耐え兼ねて、苦しい思いをしているなら…。

僕は、ナジュ君を指揮官として仰ぐことは出来ない。

「ナジュ君…。もし辛かったら、しんどかったら…。僕が、代わりに、」

「あなた、戦闘の指揮なんて出来るんですか?経験あります?」

「うっ…。け、経験…は、ないけど…」

でも…でも、ナジュ君の為なら、僕だって頑張るよ。

「少しでも…ナジュ君の支えになれるなら…」

「…」

「僕が前線に出ても構わないよ。その時は、ちゃんと…。僕も、剣を持って戦う」

ナジュ君曰く、僕の…「トゥルーフォーム」になる。

そうしても良いと思うくらい、僕も覚悟を決めている。

…それで、ナジュ君を助けられるなら。

「…天音さん…あなたって人は」

「…僕は本気だよ、ナジュ君」

「えぇ、分かってます…。心を読めば分かりますから」

そうだよね。

僕が本気だってこと、ナジュ君はよく分かっているはずだ。

そういうことだから。…遠慮しないで。

「それと、一応言っておくけど」

「はい?」

さっき言ったよね、ナジュ君。悪い口癖。

「どうせ」不死身だから、っていう。あの一言。

あれを聞いて、一応、もう一回、念の為に。

ちゃんと、釘を刺しておかないといけないと思った。

「ナジュ君が特攻する、っていう作戦は絶対ナシだからね」

「…そんな真顔で迫らないでくださいよ」

「良いから、茶化さないで。絶対にそんなことはしないって約束して」

駄目だよ、絶対。

ナジュ君がそれで良いとしても、僕は認めない。

そんなの、作戦でも何でもない。

「分かった、分かってますって。大丈夫です。しませんから」

「本当に?…本当だよね?」

「本当です」

「約束してくれる?」

「約束します」

…そう、分かった。

じゃあ、信じるからね。

「まったく…羽久さんといいあなたといい、過保護なんですから…」

僕と羽久さんが過保護なんじゃない。

ナジュ君が、自分のことを大切にしなさ過ぎなんだよ。

「一人で抱え込まないで。僕に出来ることなら、何でもするから…。だから、頼ってね」

「天音さん…」

「何があっても、どんなことになっても、それはナジュ君のせいじゃない…。ナジュ君を信じてる、皆の責任だから。だから…一人で背負わないで」

「…」

「…僕は、頼りなく見えるかもしれないけど…」

「…いいえ、そんなことはありませんよ」

ナジュ君は、ふっと微笑んでみせた。

「ありがとうございます。…正直さっきまで、少し煮詰まってたんですが」

え。

やっぱりそうだったんだ。

「お陰で、気が楽になりました。…それと、覚悟も決まりました」

覚悟…?

…ナジュ君が特攻する覚悟じゃないよね?

「…天音さん。変なこと考えてますね、違いますよ」

「えっ、ご、ごめ…」

「学院長と皆さんを招集してください。作戦を説明します」

ナジュ君は、真面目な表情でそう言った。