神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

僕は食堂に行って、小鍋とマグカップを拝借し。

砂糖ときな粉を混ぜた、きな粉ホットミルクを作り。

それをマグカップに入れて、ナジュ君の部屋に持っていくことにした。

「…」

いざ、ナジュ君の部屋の前にやって来て。

部屋の扉をノックしようとして、また臆病風に吹かれた。

…入って良いかな?

起きてることを前提に、ホットミルクなんか作ってきたけど…。…寝ちゃってたらどうしよう。

それとも、精神世界に行って、リリスさんと話してるかな。

…やっぱり僕、邪魔?

ノックするべきかどうか、部屋の前で右往左往していると。

「…天音さん」

「ひぇっ」

ガチャッ、と扉が内側から開いた。

びっくりして、思わず身体を震わせてしまった。

良かった、マグカップを落とさずに済んだ。

「な、ナジュ君…」

「…まったく。そんなところで何やってるんですか?」

呆れ顔のナジュ君である。

…現行犯逮捕、って奴だ。

「な、なんで…僕がいるって…」

「分かりますよ。何だかゴソゴソうろうろしてる気配が、部屋の中まで届いてましたから」

「うぐっ…」

…ごめんなさい。

「鬱陶しかったよね…。ごめん…」

「いえ、別に良いですけど…。そんなところで右往左往してないで、どうぞ入ってきてください」

…え。

「入って…良いの?」

邪魔じゃない?鬱陶しくない?

「良いですよ。どうぞ」

「そ、そっか…。あ…ありがとう」

それじゃ、その…お言葉に甘えて。

お邪魔します。

「ナジュ君…あの、これ、ホットミルク作ってきたんだけど…。…飲む?」

「わざわざ、それを届ける為に来たんですか?」

「え?うん…。だって、疲れてる時は、これが一番かなって…」

学院長先生じゃないけど。

頭を使って疲れた時は、糖分を摂取するのが一番だ。

そこで、ホットミルク。

「まったく…。僕のことなんて、心配しなくて良いんですよ?…どうせ僕は不死身なんですから」

僕は、思わずちょっとムッとした。

また出たよ。ナジュ君の「どうせ」。

口癖になってる。…良くない口癖だと思う。

「不死身だからとか、そんなこと関係ないでしょ」

「そうですね。あなたはいつも、そう言ってくれるんでした…。それじゃ、有り難くいただきます」

「うん、そうして」

ナジュ君は、僕が持ってきたマグカップを手に取り。

ずずず、とその中身を啜るように飲んだ。

「…熱くない?大丈夫?」

「えぇ、大丈夫です。…美味しいですね、これ。きな粉ですか?」

「うん、きな粉入りのホットミルク」

ふんわりときな粉の風味がして、普通のホットミルクより美味しいんだ。

なんて言うか…ホッとする味。

「ありがとうございます。…ちょっと、落ち着きました」

それは良かった。

…ん?良かったのか?

「落ち着きました、ってことは…。さっきまでは落ち着いてなかったってこと?」

「揚げ足を取ってきますね、天音さん…」

はぐらかそうとしないでよ。これでも真剣に尋ねてるんだから。

だけど、仕方のないことなのかもしれない。

キルディリア魔王国軍との戦いの指揮、なんて。

ナジュ君は今、僕にはとても背負えないほどの、大きな責任を背負っているのだから。