神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

案の定、フユリ様は悔しそうに、ぎゅっと両手を握り締め。

「…はい、その通りです。ベリクリーデさんの拉致の件を問い詰めても、『自分の預かり知るところではない』の一点張りで…」

「…そうですか…」

「…それどころか、キュレムさんとルイーシュさんというスパイをキルディリアに送り込んだことを、強く批難されました。キルディリアに対する敵対行為だと…」

…何が敵対行為、だ。

何が「預かり知るところではない」だ。

ベリクリーデを勝手に連れ去っておきながら。よく言う。

お前の指示だろ。どうせ。

「…面の皮が厚い、とはこのことですね」

と、舌打ち交じりのイレース。

まったくだ。

その面の皮の分厚さだけで、銃弾防げるんじゃないか?

すると。

「度重なる、キルディリア魔王国の…いえ、イシュメル女王の暴挙。アーリヤット皇国の民を傷つけ、暴力で従わせ…あまつさえ、皇王の命を盾にする卑劣な行為…」

フユリ様は目を伏せ、珍しく、怒りを滲ませた低い声で言った。

「挙げ句…。我が国の国民を…ベリクリーデさんを、勝手にキルディリア魔王国に連れ去り…。そのことさえ、あんな風にしらばっくれて…」

「…フユリ様…」

「…これ以上はもう、私の心が持ちそうにありません」

…驚いた。

フユリ様は普段、それが自国の民であろうとも、他国の民であろうとも。

困っている人がいれば、進んで手を差し伸べるような…そんな方なのに。

「お願いします、シルナ学院長…。ルーデュニア聖王国を代表して、キルディリア魔王国のこれ以上の暴挙を止めてください」

フユリ様は、シルナに向かって頭を下げ、そう頼んだ。