…5分後。
ルーデュニア聖王国の我らが女王、フユリ・スイレン様が。
イーニシュフェルト魔導学院の学院長室のソファに、ちょこんと座っている…という。
異様な光景を目にすることになった。
「…大したものではありませんが」
相手が誰だろうと、まったく臆することのないイレースが。
来客にはいつもそうしているように、お茶を入れて、フユリ様の前に出した。
「ありがとうございます。お構いなく」
フユリ様は、ぺこりと頭を下げて答えた。
…いやはや。
この学院長室に…フユリ様がいる。
やっぱり、なんかの冗談かと思って。
目をごしごしと擦ってみたけれど、やっぱり冗談ではなかった。
「ど、どうしよう…。僕、女王陛下に謁見する時の、正しい作法なんて知らない…」
天音が小声で、おろおろと呟いているのが聞こえた。
無自覚に無礼な言動をして、フユリ様に失礼を働いてしまうことを恐れているようだが。
その気持ちはよく分かる。
が、イシュメル女王ならともなく、フユリ様相手なら、そんな心配は要らないぞ。
すると、こちらも恐れ知らず(不死身なので)のナジュが、けろっとして、
「大丈夫ですよ、天音さん。女王だって、ただの人間なんですから。そんな怖がらなくても、もごもごもご」
「な、ナジュ君!失礼だよ…!」
ナジュの失礼な発言を止めようと、天音は慌ててナジュの口を両手で塞いでいた。
…お前な。自分が不死身だからって。
万が一フユリ様を怒らせて処罰を下されても、痛くも痒くもないと思ってるんだろうが…。
…あぁ、もう良い。
そんなことよりも。
「フユリ様…」
俺は、フユリ様の顔色を窺うように、そっと顔を上げて、フユリ様を見つめた。
…これまで俺は、シルナの付き添いとして、何度もフユリ様に謁見したことがある。
だけどそれはいつも、王宮でのことだった。
フユリ様がシルナを王宮に呼んで、俺がそれについていって…というように。
フユリ様自身が、わざわざイーニシュフェルト魔導学院に足を運び。
こうして、シルナと対面しているところは…初めて見た。
わざわざ、フユリ様自ら、学院までやって来るなんて。
これはただ事ではないと、すぐに理解した。
「…すみません。どうしても、すぐにシルナ学院長とお話したいと思って…。突然押し掛けてしまいました」
あろうことか、フユリ様は、シルナに向かってぺこりと頭を下げた。
相変わらず、腰が低い。
「ご迷惑をかけて、申し訳ありません」
「いや、そ、そんな、迷惑だなんて…。むしろ、私に用があるなら、呼んでくだされば、すぐに王宮に伺ったのに…」
「…いいえ。今回ばかりは、私もシルナ学院長に、頭を下げる立場ですから」
え?
「…」
さっきまで、失礼なことを言っていたナジュでさえ。
今は、無言でフユリ様をじっと見つめていた。
ナジュはお得意の読心魔法で、フユリ様がこれから言わんとしていることを、いち早く察したのだろう。
…ナジュが、こんなに真面目な顔してるなんて。
本当に…ただ事じゃないぞ、これは。
「…失礼ですね、羽久さん。僕はいつだって真面目で…」
「良いから。ちょっと静かにしてろ」
俺の心まで読まなくて良いから。こんな時に。
それよりも。
「フユリ様…。一体どうされたんですか?何が…、」
「…旧アーリヤット皇国領の各地で、反政府デモが起きているそうです」
フユリ様は、真っ直ぐにシルナの目を見つめ。
真摯な表情で…何処か引き攣ったような表情で…シルナに、そう告げた。
ルーデュニア聖王国の我らが女王、フユリ・スイレン様が。
イーニシュフェルト魔導学院の学院長室のソファに、ちょこんと座っている…という。
異様な光景を目にすることになった。
「…大したものではありませんが」
相手が誰だろうと、まったく臆することのないイレースが。
来客にはいつもそうしているように、お茶を入れて、フユリ様の前に出した。
「ありがとうございます。お構いなく」
フユリ様は、ぺこりと頭を下げて答えた。
…いやはや。
この学院長室に…フユリ様がいる。
やっぱり、なんかの冗談かと思って。
目をごしごしと擦ってみたけれど、やっぱり冗談ではなかった。
「ど、どうしよう…。僕、女王陛下に謁見する時の、正しい作法なんて知らない…」
天音が小声で、おろおろと呟いているのが聞こえた。
無自覚に無礼な言動をして、フユリ様に失礼を働いてしまうことを恐れているようだが。
その気持ちはよく分かる。
が、イシュメル女王ならともなく、フユリ様相手なら、そんな心配は要らないぞ。
すると、こちらも恐れ知らず(不死身なので)のナジュが、けろっとして、
「大丈夫ですよ、天音さん。女王だって、ただの人間なんですから。そんな怖がらなくても、もごもごもご」
「な、ナジュ君!失礼だよ…!」
ナジュの失礼な発言を止めようと、天音は慌ててナジュの口を両手で塞いでいた。
…お前な。自分が不死身だからって。
万が一フユリ様を怒らせて処罰を下されても、痛くも痒くもないと思ってるんだろうが…。
…あぁ、もう良い。
そんなことよりも。
「フユリ様…」
俺は、フユリ様の顔色を窺うように、そっと顔を上げて、フユリ様を見つめた。
…これまで俺は、シルナの付き添いとして、何度もフユリ様に謁見したことがある。
だけどそれはいつも、王宮でのことだった。
フユリ様がシルナを王宮に呼んで、俺がそれについていって…というように。
フユリ様自身が、わざわざイーニシュフェルト魔導学院に足を運び。
こうして、シルナと対面しているところは…初めて見た。
わざわざ、フユリ様自ら、学院までやって来るなんて。
これはただ事ではないと、すぐに理解した。
「…すみません。どうしても、すぐにシルナ学院長とお話したいと思って…。突然押し掛けてしまいました」
あろうことか、フユリ様は、シルナに向かってぺこりと頭を下げた。
相変わらず、腰が低い。
「ご迷惑をかけて、申し訳ありません」
「いや、そ、そんな、迷惑だなんて…。むしろ、私に用があるなら、呼んでくだされば、すぐに王宮に伺ったのに…」
「…いいえ。今回ばかりは、私もシルナ学院長に、頭を下げる立場ですから」
え?
「…」
さっきまで、失礼なことを言っていたナジュでさえ。
今は、無言でフユリ様をじっと見つめていた。
ナジュはお得意の読心魔法で、フユリ様がこれから言わんとしていることを、いち早く察したのだろう。
…ナジュが、こんなに真面目な顔してるなんて。
本当に…ただ事じゃないぞ、これは。
「…失礼ですね、羽久さん。僕はいつだって真面目で…」
「良いから。ちょっと静かにしてろ」
俺の心まで読まなくて良いから。こんな時に。
それよりも。
「フユリ様…。一体どうされたんですか?何が…、」
「…旧アーリヤット皇国領の各地で、反政府デモが起きているそうです」
フユリ様は、真っ直ぐにシルナの目を見つめ。
真摯な表情で…何処か引き攣ったような表情で…シルナに、そう告げた。



