神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

ーーーーーー…遥かキルディリア魔王国から、クロティルダタクシーに乗って。

ようやく俺、ベリクリーデ、クロティルダの3人は、ルーデュニア聖王国に帰還した。

…本当に、長い旅路だった。

「着いたぞ」

ようやく、見慣れた聖魔騎士団魔導部隊隊舎の前に辿り着き。

ずっと俺をお姫様抱っこしていたクロティルダが、地面に下ろしてくれた。

俺は思わず、そのまま地面に膝をつき。

はーはーと、荒く肩で息をした。

…さすがに、キツかったぞ。

「はぁ…。はぁ…。…疲れた…」

「…大丈夫か?」

「だい…じょう、ぶ、じゃ…ねぇ、よ」

超高速のジェットコースターに、ずっと乗り続けていたみたいな。

しかもそのジェットコースター、命を守る為のシートベルトとか、何もないんだぞ。

ただ、クロティルダが抱えてくれてるだけだから。

クロティルダがもし、変な気を起こしたり、うっかり手が滑ったりしたら。

俺は、超高速ジェットコースターから真っ逆さま。

しかも、キルディリア魔王国からルーデュニア聖王国への道のりは、ほぼ海路だから。

ずーっと、海の上を飛行していた。

いつクロティルダの手からこぼれ落ちて、海の藻屑になるかと、気が気じゃなかったよ。

まぁ、そういうことをする奴じゃないって分かってるけどな。クロティルダは。

うっかり落としたら、ちゃんと拾ってくれるだろうよ。…多分。

そのくらいの信用はある。…一応。

それに、あの状況で、無事に逃げ帰ってくるには。

やはり、クロティルダの協力が必要不可欠だった。

俺達が無事に帰ってこられたのは、クロティルダのお陰である。

そう思えば、感謝こそすれ、文句を言う筋合いはないだろう。

…ただ、出来れば、お姫様抱っこじゃなければ、もっと有り難かったんだけどな。

足、もうガックガクだよ。

マジで、めっちゃ疲れた。ただ運ばれてるだけで、何もしていないというのに。

運ばれる荷物になるのも大変だな。

…それなのに。

「ほぇー。楽しかったー」

ずっと、クロティルダにおんぶされていたベリクリーデが。

ひょいっ、とクロティルダの背中から、地面に降り立った。

膝も腰も、すっかり砕けてしまっている俺と違って。

ベリクリーデは確かな足取りで、けろっとしていた。

…元気だな、こいつは。

しかも、「楽しかった」だと?

マジで、ジェットコースター感覚だったのか?

「良かったな、我が姫」

「うん。ありがと、クロッティ」

「礼には及ばない」

…なんとも呑気な会話である。

…ったく、この、人外生物共め…。

「ジュリス、大丈夫?」

地面に膝をついて、息を荒くしている俺に。

ベリクリーデが、手を差し伸べてきた。

…どーも。

俺は、差し出されたベリクリーデの手…ではなく。

その手首を、ガッ、と掴んだ。

「ふぇっ?」

「お前…ベリクリーデ、か?」

「え?」

クロティルダジェットコースターに乗りながら、ずっと考えていたのだ。

『アメノミコト』の暗殺者と…そして、イシュメル女王と対峙していた時。

俺達の間に割って入ったのは、あれは本当にベリクリーデだったのか、と。