神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

一度決起が起きれば、それを止める手段は、今のキルディリア総督府にはない。

キルディリアの支配が、まだ完全には及んでいない…今だからこそ出来る方法だ。

「…なんてことを…」

絶句して、窓の外を呆然と見つめるブラマンジュちゃん。

…すまんね。

別に、絶望させる気はなかったんだが。

…でも、いずれはこうなる運命だったのだ。

何せ俺達は…最初から。

君達の味方、ではなかったから。

いつか、何らかの形で、決別の時が来ることは分かっていた。

それがこんな…派手な方法になるとは思わなかったがな。

「どうして…!どうして、こんな…!」

「…どうしてか、なんて。あなた達の方がよく分かってるんじゃないですか?」

ルイーシュが、杖をペンみたいに、くるくると回しながら言った。

杖でペン回ししなさんな。

「俺のこともキュレムさんのことも、ハナから信用していなかったんでしょう?」

「…そ、んな…ことは、」

「良いですよ、建て前は。どうせそれも、イシュメル女王の命令でしょう?…ルーデュニアからの怪しい亡命者を監視しろ、って」

「…!」

ルイーシュの鋭い指摘に、目を見開く二人の見習い魔導師。

…やっぱりな。

そうだったんだ。

…まぁ、そりゃそうだよな。

信用してなかったのは、こちらも同じなのだから。

これに関しては…お互い様、って奴だ。

「あなた方のご想像通りです。俺とキュレムさんは最初から、ルーデュニア聖王国を裏切ってはいません。イーニシュフェルト魔導学院の学院長から依頼されて、キルディリア魔王国に潜入したスパイです」

…おいおい、ルイーシュ。

盛大にネタばらししちゃってどーすんの。

もう良いけどさ。どうせバレちゃってるから。

「…!…スパイ…」

「…やはり…そうだったんですね」

「…あぁ、そうだ。騙して悪かったね」

…なんて言ったところで、怒りが収まるはずもないが。

でもさ、君等の方も、俺達を騙したじゃん?

だから、これもお互い様。

恨みっこなしにしようぜ。

しかし。

「…許せない」

お?

ブラマンジュちゃんは、憎しみのこもった眼差しで俺達を睨んだ。

「私達のことを…そして、キルディリア魔導師の誇りを穢すような真似を…!」

「…」

…それは、まぁ、なんつーか。

…申し訳ない、と思わなくもないけど。

誇りって言われてもなぁ…。考えたこともないからなぁ…。

…誇り(笑)。

「…魔導師かそうじゃないかで、人を差別するような奴らに…ハナから誇りなんてあるもんか」

あんたさんらの誇りは、ただの虚栄だ。

ちょっとばかり上手く魔法が使える…ってだけで、思い上がって。虚栄に縋って。

それが誇りだと?…馬鹿にするな。

他者に見せつけ、下らない自尊心を満足させる為じゃない。

俺達はいつだって…大切な何かを守る為に、魔法を使っているのだ。

だから。

例えキルディリア魔王国で、上級魔導師様と崇められ、王族のような暮らしを保証されたとしても。

俺は絶対、そんなことは願い下げだね。