「ふんぐぬぬぬぐぅぅ…」
「…キュレムさん、大丈夫ですか。人間にあるまじき声が出てますが」
おぉ、そうか。
「それはすまんね、つい…そう、母国の言葉が出てしまった」
「一緒ですけどね、母国…」
そーだっけ。
じゃあ、地方の…方言ってことで。
すると、奇妙な声を出している俺を心配したのか。
「ちょっと休みます?」
と、ルイーシュは聞いてきた。
なんだと。
「休んでられるかっ!」
俺は手を動かし続けながら、そう答えた。
全身が怒りで沸騰する、というのは、こういう時のことを言うんだろうな。
俺は怒っていた。
そりゃあもう、死ぬほど、怒っていた。
テストで、あと1点で黒点だったのに、ギリギリ赤点をだった時と同じくらい、怒っていた。
…え?それは自分の勉強不足のせいだろ、って?
黙れ。
「も〜ぉぉぉ…。堪忍袋の緒が切れたからな」
これまで俺は、スパイとしてキルディリア魔王国に潜入してからというもの。
あらゆる理不尽、あらゆる嫌なことに耐えてきた。
キルディリア魔王国本国にしても、このアーリヤット領にしても。
露骨なほどの非魔導師の差別に始まり、居心地の悪い「上級魔導師様」の扱いにも、ずっと耐えてきた。
自分の家に戻ったって、ブラマンジュちゃん他、メイドや使用人達の目が気になって、気を抜くことは出来ない。
それに、周囲の目を必死に誤魔化し、こそこそしながら。
潜入先で知り得た情報を、何とかしてルーデュニア聖王国に送る度。
バレやしないかと、びくびくするあの緊張感にも耐えた。
一瞬たりとも、気の休まらない生活にも、頑張って耐えた。
ルーデュニア聖王国にいた時に、ずっと毎週楽しみにしていた、新作のカップ麺を食べられないことにも耐えた。
たまにはジャンクフードでも食べたいな…。バーガー屋のフライドポテト食べたい…と思っても、耐えた。
ありとあらゆることに耐えて、耐えて、耐えてきた。
そうやって、スパイとして、キルディリア魔王国の上級魔導師として。
イシュメル女王の信頼を勝ち取る為に、俺にしては珍しいほどに、努力を重ねてきたのに。
…そのすべてが、見事に、ぱーんっと、泡と消えた。
「あんの、女狐め…!」
俺が毒づいているのは、勿論、キルディリアのイシュメル女王である。
絶対に許すことは出来ない。
先日、クロティルダがアーリヤット領にいる俺とルイーシュのもとを、こっそり訪ねてきて。
そして、こっそり教えてくれた情報によると。
なんと、俺とルイーシュがアーリヤット領にいる間に。
イシュメル女王が指示して、ベリクリーデちゃんをルーデュニア聖王国から連れ去り。
キルディリア魔王国に、無理矢理拉致していったという。
それを聞いた瞬間に、俺の脳みそは完全に沸騰した。
今にもちぎれそうになるのを、必死に、何度も結び直しては持ちこたえていた、俺の堪忍袋の緒は。
あっという間に、ぷちん、と音を立てて切れた。
俺やルイーシュのことなら、煮るなり焼くなり、好きにすれば良いがな。
だけど、ベリクリーデちゃんに手出しするのはナシだ。有り得ない。
イシュメル女王のあまりの狡猾さに、怒りを通り越して、逆に尊敬の念さえ生まれてくる。
「…キュレムさん、大丈夫ですか。人間にあるまじき声が出てますが」
おぉ、そうか。
「それはすまんね、つい…そう、母国の言葉が出てしまった」
「一緒ですけどね、母国…」
そーだっけ。
じゃあ、地方の…方言ってことで。
すると、奇妙な声を出している俺を心配したのか。
「ちょっと休みます?」
と、ルイーシュは聞いてきた。
なんだと。
「休んでられるかっ!」
俺は手を動かし続けながら、そう答えた。
全身が怒りで沸騰する、というのは、こういう時のことを言うんだろうな。
俺は怒っていた。
そりゃあもう、死ぬほど、怒っていた。
テストで、あと1点で黒点だったのに、ギリギリ赤点をだった時と同じくらい、怒っていた。
…え?それは自分の勉強不足のせいだろ、って?
黙れ。
「も〜ぉぉぉ…。堪忍袋の緒が切れたからな」
これまで俺は、スパイとしてキルディリア魔王国に潜入してからというもの。
あらゆる理不尽、あらゆる嫌なことに耐えてきた。
キルディリア魔王国本国にしても、このアーリヤット領にしても。
露骨なほどの非魔導師の差別に始まり、居心地の悪い「上級魔導師様」の扱いにも、ずっと耐えてきた。
自分の家に戻ったって、ブラマンジュちゃん他、メイドや使用人達の目が気になって、気を抜くことは出来ない。
それに、周囲の目を必死に誤魔化し、こそこそしながら。
潜入先で知り得た情報を、何とかしてルーデュニア聖王国に送る度。
バレやしないかと、びくびくするあの緊張感にも耐えた。
一瞬たりとも、気の休まらない生活にも、頑張って耐えた。
ルーデュニア聖王国にいた時に、ずっと毎週楽しみにしていた、新作のカップ麺を食べられないことにも耐えた。
たまにはジャンクフードでも食べたいな…。バーガー屋のフライドポテト食べたい…と思っても、耐えた。
ありとあらゆることに耐えて、耐えて、耐えてきた。
そうやって、スパイとして、キルディリア魔王国の上級魔導師として。
イシュメル女王の信頼を勝ち取る為に、俺にしては珍しいほどに、努力を重ねてきたのに。
…そのすべてが、見事に、ぱーんっと、泡と消えた。
「あんの、女狐め…!」
俺が毒づいているのは、勿論、キルディリアのイシュメル女王である。
絶対に許すことは出来ない。
先日、クロティルダがアーリヤット領にいる俺とルイーシュのもとを、こっそり訪ねてきて。
そして、こっそり教えてくれた情報によると。
なんと、俺とルイーシュがアーリヤット領にいる間に。
イシュメル女王が指示して、ベリクリーデちゃんをルーデュニア聖王国から連れ去り。
キルディリア魔王国に、無理矢理拉致していったという。
それを聞いた瞬間に、俺の脳みそは完全に沸騰した。
今にもちぎれそうになるのを、必死に、何度も結び直しては持ちこたえていた、俺の堪忍袋の緒は。
あっという間に、ぷちん、と音を立てて切れた。
俺やルイーシュのことなら、煮るなり焼くなり、好きにすれば良いがな。
だけど、ベリクリーデちゃんに手出しするのはナシだ。有り得ない。
イシュメル女王のあまりの狡猾さに、怒りを通り越して、逆に尊敬の念さえ生まれてくる。



