神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

俺、真面目に会話してたつもりだったんだが?

「はい、キュレムさん。ピザまんどうぞ」

ルイーシュは、はふはふと中華まん(ルイーシュはあんまん)を齧りながら。

美味しそうな匂いを漂わせる、黄色いピザまんを差し出してきた。

「それどころじゃねぇだろ!」…と言いたいところだが。

でも、ピザまんの誘惑には勝てない。

…え?意志が弱いって?

馬鹿野郎。

こんな良い匂いを漂わせてるのに、目の前に差し出されて、食べずにいられるか。

もらうわ。

「もぐ…」

干したての布団を思わせる、ふっかふかの柔らかい生地の中に。

とろりととろけるチーズとケチャップが、絶妙なハーモニーを奏でている。

「…うまっ…!」

「良かったですね」

俺、これまではどっちかと言うと、豚まん派だったんだけどさ。

ピザまんも美味いな。

学院長だったら、「チョコまんしか勝たん!」って頑なに言いそうだけど。

「アーリヤット皇国にも、中華まんの店なんかあるんだな」

「えぇ。他にも色々な種類がありましたよ」

「へぇ?」

肉まんとピザまん、そしてあんまんだけじゃないのか。

「普通の肉まんは勿論、ゴマまんとか、きなこまんとか…」

「ふーん。意外とアリだな…」

「それから、うなぎまんと、コーンスープまん、キュウリまんなんてのもありましたね」

「キュウリ…!?」

うなぎとコーンスープは、まぁ何となく分かる。

…でも、キュウリまんって何?

アーリヤット人は、キュウリまんなんて食うの?

「写真を見たところ、緑色の中華まんでしたよ」

「マジかよ…。キュウリまんって美味いのか?」

「さぁ。あまり挑戦しようという気にはなりませんね」

…だよな。

カッパじゃないんだから。

冒険心強いんだなー、旧アーリヤット皇国人の皆さんは…。

…。

…で。

「…あのさ、ルイーシュ。なんか勘違いしてるみたいだけど」

「はい?」

「俺、別にどの中華まんを食べようかと悩んでた訳じゃないぞ」

「え、そうなんですか?」

…当たり前だろ。何言ってんだ。

「たくさんの種類の中華まんの中から、どれを選ぶか…。全神経を集中させて、もっとも美味しいと思われる中華まんを選ぶ為に、いつになく真剣になっているものと、」

「んな訳ねーだろ!」

何処の誰が、中華まんの為にそんな真剣になるんだよ。

いや、中には、中華まんに人生賭けてる人もいるかもしれないけどさ。

俺は違うから。そんな…中華まんガチ勢やってませんから。

分かってて言ってんだろ、お前。

「国の!アーリヤット皇国の!情勢のことを考えてたんだよ」

「えっ。そうだったんですか?」

「当たり前だろ!」

中華まんに悩んでたんじゃねーよ。

「それは失礼しました。キュレムさんが、そこまで深刻に悩んでいるとも知らず、俺…」

「まったくだよ」

「キュウリまん、買ってきちゃいました」

「何だと…!?」

…やりやがったのか、貴様。

ネタにもならんぞ。

それ、絶対、俺に食べさせる為に買ってきただろ?