神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

…俺とルイーシュが立ち去った後。

二人の人物が、代わりに水晶玉の前に立っていた。




『…で、どうじゃ?我が国の新米上級魔導師殿達は』

「…とても変わった人です」

まず先に答えたのは、二人のうちの一人…。

ルイーシュの専属見習い魔導師の、エリトール君だった。

「魔導書の執筆を暇潰しだと言ったり…魔法のコツは勘だと言ったり…」

「キュレム様も似たようなものです。…本国の上級魔導師様とは、全然違っていて…」

更に、俺の専属見習い魔導師であるブラマンジュちゃんも、続けてそう言った。

すると、水晶玉の向こうのイシュメル女王は、口元を隠しながら笑った。

『ふむ、そうかそうか…。さすがは、イーニシュフェルトの聖賢者殿仕込みの魔導師という訳じゃな』

「ですが…今のところは、まだ目立った動きは見せていません」

「陛下…。あの二人は、本当にスパイなのでしょうか?」

ブラマンジュちゃんが、心配そうな顔で尋ねた。

そう。

エリトール君とブラマンジュちゃんは、ただの見習い魔導師ではなかった。

この二人は、秘密裏に、俺とルイーシュの監視役も引き受けていたのだ。

勿論、それもイシュメル女王の命令だ。

最初から俺とルイーシュは、イシュメル女王にも、エリトール君やブラマンジュちゃんにも、信用されてなかったってことだな。

まぁ、お互い様なんだが。

『…さてな。それはまだ分からぬが』

「もしも…もしもそうなら、今すぐにでも…」

『いや、その必要はない』

「え?」

イシュメル女王は、楽しげに、ふふ、と微笑んだ。

『その二人は泳がせておけ。そして、アーリヤット領に釘付けにするのじゃ。キルディリア本国に戻らせてはならぬぞ』

「…何故ですか?」

『本国には今、大事な「お客人」がいるからじゃ。間違っても、鉢合わせしてしまうと面倒なことになるからな』

「…」

イシュメル女王が何を言っているのか、よく理解出来なかったらしいエリトール君が、口ごもってしまったが。

女王は構わず、楽しそうに言った。

『もとより、ルーデュニアからの亡命魔導師になど、期待してはおらぬわ。わらわの本命はこちらよ』

「…分かりました。では、ルイーシュ様とキュレム様は…このまま、監視を続けるということでよろしいですね」

『うむ。頼んだぞ』

そう言って。

水晶玉の通信が切れた。

その時である。

水晶玉の向こう、キルディリア魔王国にいるイシュメル女王のもとに。

ルーデュニア聖王国から、ついに待ち望んだ『お客人』が到着したとの連絡が入ったのは。