総督補佐官に呼ばれて、行ってみると。
そこには、キルディリア魔王国の通信機器…水晶玉が鎮座していた。
その水晶玉の向こうに、玉座に座るイシュメル女王の姿が映っていた。
まるでテレビ通話のように。
ひぇっ、と言いそうになったのを、必死に堪えた。
『調子はどうじゃ。新米上級魔導師殿』
水晶玉の向こうから、イシュメル女王の声が聞こえた。
キルディリア魔王国では、こんな手法による通信技術が確立されているのか。
侮れん。
「えぇっと…。…まぁ、ぼちぼち頑張ってます」
お宅の支配体制さぁ、ちょっと倫理的に問題あると思うんだけど!?
…と、本当は、声を大にして言いたいんだけどな。
言う訳にはいかないので、我慢している。
『ふむ、そうか…。アーリヤット領の統治は、順調に進んでいると思って良いのじゃな?』
…それは。
「えぇ…まぁ…」
『なんじゃ。歯切れの悪い返事じゃな』
ぎくっ。
「どうも、旧アーリヤット皇国民の一部は、キルディリア魔王国の支配に反抗的な態度を見せているようで」
俺の窮地を救う為か。
ルイーシュが、イシュメル女王に向かってそう説明した。
「街の中に、不満が広がっているようです」
『そうか』
無理もないことだがな。
「もう少し、元アーリヤット皇国民の国民感情に寄り添った政策に緩和してはどうですか?こう性急に国家の体制が変わったら、国民が動揺するのも当然…」
『何か勘違いしているようじゃの、上級魔導師殿』
緩和策を申し出たルイーシュに、イシュメル女王が目を細めた。
『そこに住んでおるのは、元アーリヤット皇国民ではない。新しい、キルディリア魔王国の民なのじゃ』
「…」
…詭弁だな。
『国が変われば、支配体制が変わるのも当然のことよ。新しいキルディリア国民には、早くこの国のやり方に慣れてもらわねばな』
馬鹿馬鹿しい。
国が変わったら、住んでる人が変わるとでも?
国のトップが変わったって、その土地に住んでいる人には何の変わりもないというのに。
彼らの暮らしを脅かす権利なんて、魔導師だろうと、女王様だろうと、ないはずなのだ。
「…新体制を定着させる…その過程で、多くの無辜の民が傷ついても、ですか?」
『多少の流血は想定内よ』
あんたは想定内でも、アーリヤット皇国民達にとっては想定外だろ。
何言ってんだ。
「そうですか。ですが、国民達は…」
『おぬしらは、キルディリア魔王国の民じゃ』
…何?
『旧アーリヤット皇国の民になど、感情移入する必要はないはずじゃが?』
「…別に、感情移入している訳じゃ…」
『それとも何か。わらわが強引にアーリヤット領を支配したら、なんぞおぬしらに都合の悪いことでもあるのか?』
「…!」
…思わず、血の気が引いた。
「…一体、どういう意味ですか」
『…おや。つい、口が滑ったようじゃ』
イシュメル女王は、愛用の扇で口元を隠した。
『おぬしらには期待しておる。これからもわらわと、キルディリア魔王国に尽くしてくれ』
「…はい。そのつもりです」
『おぬしらとの謁見は終いじゃ。下がるが良い』
「…失礼します」
戸惑った表情や、狼狽えた表情は見せられなかった。
動揺を抑えつつ、努めて平静を装って。
俺達は、イシュメル女王の前から…水晶玉の前から、くるりと踵を返した。
そこには、キルディリア魔王国の通信機器…水晶玉が鎮座していた。
その水晶玉の向こうに、玉座に座るイシュメル女王の姿が映っていた。
まるでテレビ通話のように。
ひぇっ、と言いそうになったのを、必死に堪えた。
『調子はどうじゃ。新米上級魔導師殿』
水晶玉の向こうから、イシュメル女王の声が聞こえた。
キルディリア魔王国では、こんな手法による通信技術が確立されているのか。
侮れん。
「えぇっと…。…まぁ、ぼちぼち頑張ってます」
お宅の支配体制さぁ、ちょっと倫理的に問題あると思うんだけど!?
…と、本当は、声を大にして言いたいんだけどな。
言う訳にはいかないので、我慢している。
『ふむ、そうか…。アーリヤット領の統治は、順調に進んでいると思って良いのじゃな?』
…それは。
「えぇ…まぁ…」
『なんじゃ。歯切れの悪い返事じゃな』
ぎくっ。
「どうも、旧アーリヤット皇国民の一部は、キルディリア魔王国の支配に反抗的な態度を見せているようで」
俺の窮地を救う為か。
ルイーシュが、イシュメル女王に向かってそう説明した。
「街の中に、不満が広がっているようです」
『そうか』
無理もないことだがな。
「もう少し、元アーリヤット皇国民の国民感情に寄り添った政策に緩和してはどうですか?こう性急に国家の体制が変わったら、国民が動揺するのも当然…」
『何か勘違いしているようじゃの、上級魔導師殿』
緩和策を申し出たルイーシュに、イシュメル女王が目を細めた。
『そこに住んでおるのは、元アーリヤット皇国民ではない。新しい、キルディリア魔王国の民なのじゃ』
「…」
…詭弁だな。
『国が変われば、支配体制が変わるのも当然のことよ。新しいキルディリア国民には、早くこの国のやり方に慣れてもらわねばな』
馬鹿馬鹿しい。
国が変わったら、住んでる人が変わるとでも?
国のトップが変わったって、その土地に住んでいる人には何の変わりもないというのに。
彼らの暮らしを脅かす権利なんて、魔導師だろうと、女王様だろうと、ないはずなのだ。
「…新体制を定着させる…その過程で、多くの無辜の民が傷ついても、ですか?」
『多少の流血は想定内よ』
あんたは想定内でも、アーリヤット皇国民達にとっては想定外だろ。
何言ってんだ。
「そうですか。ですが、国民達は…」
『おぬしらは、キルディリア魔王国の民じゃ』
…何?
『旧アーリヤット皇国の民になど、感情移入する必要はないはずじゃが?』
「…別に、感情移入している訳じゃ…」
『それとも何か。わらわが強引にアーリヤット領を支配したら、なんぞおぬしらに都合の悪いことでもあるのか?』
「…!」
…思わず、血の気が引いた。
「…一体、どういう意味ですか」
『…おや。つい、口が滑ったようじゃ』
イシュメル女王は、愛用の扇で口元を隠した。
『おぬしらには期待しておる。これからもわらわと、キルディリア魔王国に尽くしてくれ』
「…はい。そのつもりです」
『おぬしらとの謁見は終いじゃ。下がるが良い』
「…失礼します」
戸惑った表情や、狼狽えた表情は見せられなかった。
動揺を抑えつつ、努めて平静を装って。
俺達は、イシュメル女王の前から…水晶玉の前から、くるりと踵を返した。



