神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「フユリ様は…この戦争を、一刻も早くやめさたい…。そう思っているようです」

「…そうだろうね…」

世界魔導師保護条約、あのふざけた条約の締結を阻止するのが目的なら、もう充分だ。

今が引き際。

逆に、この機を逃せば。

ずるずると、泥沼の戦争が長引くだけ。

たくさんの血が流れ、たくさんの…命が奪われてしまう。

一国の王として、フユリ様はそんな事態を見過ごせない。

それが他国の民であったとしても。

平和を望む気持ちは、万国共通だからな。

アーリヤット皇国の民も、そしてキルディリア魔王国の民だって本当は…。…これ以上、血と悲しみが流されるのは望んでいないはずだ。

「ここ最近のフユリ様は、とても…酷く、思い悩んでいらっしゃるようで…。…私、見ていられなくて…」

「シュニィちゃん…」

「差し出がましいかもしれませんが、私、何度かお声がけしたんです。何か力になれることはありませんか、って。…ですが…何もおっしゃってくれなくて…」

…だろうな。フユリ様は。

だけど、それはシュニィが頼りないからではなく…。

「やはり、私はフユリ様に信頼されていないのでしょうか…」

「そんなことないよ、シュニィちゃん。フユリ様は、シュニィちゃんのことを凄く信頼してるはずだよ」

シルナは、きっぱりとそう言った。

うん。俺もそう思う。

「だけどフユリ様は、女王としての責任を重く受け止めてらっしゃるから…。きっと、シュニィちゃん相手でも、弱みを見せられないんだろうね」

「…そうですか…」

女王としては、常に毅然とした態度を見せなければならない。

だけど、フユリ様個人としては…。…きっと、思うところはたくさんあるはずだ。

特に…アーリヤット皇国の皇王ナツキ様は、フユリ様の実の兄なのだから…。

「…よし、それじゃあ、私がフユリ様と話してみるよ」

と、シルナが申し出た。

「学院長先生が?…良いんですか?」 

「勿論だよ」

…それは名案だな。

長い付き合いのシルナになら、フユリ様も胸の内を打ち明けてくれるかもしれない。

「シルナ…。お前もたまには良いことを言うじゃないか」

「ちょっと。『たまには』は余計だよっ!」

「そのチョコまみれのサンドイッチを見た時は、とうとうボケの末期症状かと思ったもんだが…」

「ちょっと!羽久が私に失礼なこと言ってる!」

「あ、あはは…」

俺達のやり取りを見て、シュニィは乾いた笑い声をこぼしたのだった。