神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

…酷いよな、これ。

ペットお断り、とか。喫煙お断り、とかなら、まだ分かるよ。

でもさ、『非魔導師お断り』なんて。

魔導師の客じゃないと、お店を利用することさえ許さない、と。

良いじゃん。誰でも。

別に食い逃げしようって訳じゃないんだから。

魔導師だろうが、魔導師じゃなかろうが、ちゃんとお金を払うなら、等しく客だろ?

ハンバーグの味だって、変わらないだろ?

何が問題なんだよ。

「…なんか、ハンバーグ食べる気、萎えたわ」

「…ですね」

わざわざ赤文字で、でかでかと非魔導師を拒絶する、その貼り紙に嫌気が差し。

俺達は店の前で、入店をやめて踵を返した。

気分悪いわ。…非常に。

…とは、いえ。

このお店が、特別、差別主義的なのではない。

…どのお店もそうなのだ。

新しいキルディリア総督が、アーリヤット領を支配するなり。

キルディリア総督は、キルディリア本国と同じ布告を出した。

非魔導師は、政府に許可された施設しか利用してはいけない、と。

キルディリア魔王国でも、好きなお店に自由に立ち入れるのは、魔導師だけで。

非魔導師の客は、非魔導師専用のお店しか利用出来なかった。

あの胸糞悪いルールを、アーリヤット皇国の国民達にも押し付けたのである。

そこで、旧アーリヤット皇国でお店を営業している人々は、慌てて、店の前に貼り紙を貼らなければならなくなった。

「非魔導師お断り」の貼り紙を。

…信じられるか?

昨日まで行きつけだった居酒屋やファミレスが、今日行ったら、「魔導師じゃないから」という理由で、入店禁止されるんだぞ。

意味不明だよな。

あるいは寛容策として、魔導師と非魔導師で、入店可能時間を分けていた。

〇時〜〇時までは魔導師のみ入店可、〇時〜〇時までは非魔導師のみ入店可、みたいな。

それでも、優先されるのは魔導師のようで。

11〜13時のランチタイムや、19〜21時のディナータイムは、魔導師が優先され。

それ以外の、「ちょっと外れた」中途半端な時間のみ、非魔導師の入店が可能。

魔導師と非魔導師が、同じ時間に同じお店に入店することは出来ないようになっている。

更に、店内でも喫煙席と禁煙席みたいに、魔導師と非魔導師で完全に席を分けている店もあるそうだ。

そこまでする必要、あるか?

分煙のノリで、魔導師と非魔導師を分けやがる。

煙草の問題なら、受動喫煙とか副流煙とか、煙で気分が悪くなる人とかいるから、席を分けるのも無理ないけど。

魔導師と非魔導師で席を分ける必要は、一体何処にあるんだ?

同じ空気吸っても死なねーよ。アホか。

…と、俺は思う。

それに、元アーリヤット国民の民も、同じように思っているのだろう。

魔導師と非魔導師で、ここまで差別するなんて馬鹿馬鹿しい、と。

…だけど、それが新しい、アーリヤット領のルールなのだから。

敗戦国の民である彼らは、大人しく従わない訳にはいかない。

分かってはいるけれど、納得は出来ない。

「おっ…。海鮮丼の店があるぞ」

「俺、魚介類苦手なんですけど」

「あー…。そうだっけ…。じゃあ、その隣の…ピザの店があるぞ」

『窯焼き手作りピザ』って、のぼりが立ってる。

うまそ。

…しかし、そのお店に入ろうとしたら。

「げっ…」

入り口に、でかでかと。

『魔導師以外立ち入り禁止』のステッカーが、べたっ、と貼り付けてあった。

…ここもかよ。

「あー…。もう、ピザ食べる気なくしたわ…」

分かる?

今、宿題しようと思ってたのに。

そのタイミングで、「宿題しなさい!」と言われたら、一気にやる気をなくす、あの感じ。

あれと同じだよ。