神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

…ナツキ様のことは、どうでも良いし。

イシュメル女王のことだって、俺にとってはどうでも良いけどさ。

その二人の争いに巻き込まれる、何の罪もない国民達。

彼らが憐れでならない。

ただそこに暮らしていると言うだけで…戦火に巻き込まれる人々のことが…。

「…こんなこと…早く終わらせて欲しいですね」

「…そうだな…」

自国の民ではないとはいえ、アーリヤット皇国の国民達は、同じ人間なのだ。

こうして、俺達が呑気にホットチョコレートを飲んでいる間も。

いつ自分が、自分の大切な人が傷つけられるかと、びくびくと怯えている人々がいる。

そう思うだけで、胸が痛んだ。

シュニィの言う通りだ。

こんなことは…早く終わらせなければならない。

一刻も早く…平和を取り戻さなければ。

だけど…。俺達に何が出来る?

戦地からは遠く離れた俺達に…出来ることなんて、何も…。

「…フユリ様はなんて言ってるの?」

ずっと黙って、俺とシュニィの会話を聞いていたシルナが。

ようやく口を開いて、シュニィにそう尋ねた。

…驚いた。

チョコサンドに夢中になって、全然会話に入ってこないから。

もう、会話に参加する気はないんだと思ってたぞ。

一応、真面目に考える気はあったんだな。

「…何だか、また羽久が私に失礼なことを…」

「良いから。シュニィ、フユリ様はなんて?」

「あ、はい…。実は、相談したいことというのも、フユリ様のことなんです」

え?

「この度の…キルディリア魔王国のアーリヤット皇国侵攻に、フユリ様は大変胸を痛めておいでです…。一度は敵対したことのある国ですが、このままアーリヤット皇国の民を見捨てることは出来ない、と…」

「…フユリ様…」

…あの人らしいな。

フユリ様が心配しているのは、アーリヤット皇国の国民のこともあろうが。

…実の兄であるナツキ様を、見捨てることは出来ない。

優しい彼女は、きっと、そう思っているのだろう。