神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「俺が…あんなつまらない罠に引っ掛かかりさえしなければ。ベリクリーデの傍を離れなければ…こんな、ことには…!」

「ジュリス…」

…かける言葉も見つからないが。

「…ジュリス君には、何の責任もないよ」

すると、シルナが。

そっと、ジュリスを慰めるように言った。

「もし、ベリクリーデちゃんを連れ去ったのが、イシュメル女王の命令によるものなら…。彼女のことだ。きっと、何通りもの作戦を立てて、どんな方法を使っても、ベリクリーデちゃんを連れて行ったはずだ」

「…」

…だろうな。

あの狡猾な女王のこと…。きっと、ベリクリーデを連れ去る為の手段を、いくつも講じていたはずだ。

仮に、ジュリスがベリクリーデの傍を離れなかったとしても。

別の方法を使って、ベリクリーデを連れ去る計画を練っていたことだろう。

こう言っちゃ、なんだが…。…ジュリスが油断していても、していなくても、ベリクリーデは連れ去られていた。

ただ、もう少し時期が遅れていたかもしれない。…それだけの差だ。

俺はそう思う。

ジュリスが納得出来なかったとしても。

「だから…そんなに自分を責めないで」

「…」

無言で、唇を噛み締めるジュリス。

…本当は、ジュリスだって分かってるはずだ。

「ジュリス君、ベリクリーデちゃんはきっと、自分が連れ去られたのはジュリス君のせいだ、なんて…。そんなことは思ってないはずだよ」

「っ…」

ジュリスは、ハッとして顔を上げた。

そうだな。

ベリクリーデは、そういう奴だ。

「今君がすべきことは、自分を責めることじゃない。そうじゃなくて、それよりも…」

「っ…分かってる」

ジュリスは天を仰ぎ、はぁー、と大きく息を吐いてから。

ぱんっ、と両手で自分の頬を叩いた。

気合を入れ直すかのように。

「畜生、ふざけやがって。あの女…!ベリクリーデに余計な手出しをしたらどうなるのか、教えてやる」

…口調は勇ましく、そして台詞は乱暴だったが。

しかし、ジュリスが纏う、怒りのオーラがようやく消えていた。

いつものジュリスだ。

「ベリクリーデは、俺が絶対に連れ戻す。行き先が何処だろうと、誰の意志だろうと関係ねぇ…。必ずあいつを連れ戻して、そしてカプリッコを食べさせる」

か、カプリッコ?

…一体何の話か分からないが。

「ジュリス…。本当に大丈夫か?」

「大丈夫に決まってるだろ。俺を誰だと思ってる?」

ジュリスだ。

…なら、問題ないな。

「悪いが、シュニィ。…少し留守にする」

「分かりました。…ベリクリーデさんを連れて、必ず無事に戻ってきてください」

「あぁ、任せろ」

実に、頼もしい返事である。