神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

ーーーーー…キュレムとルイーシュが、旧アーリヤット皇国に赴任した、丁度その頃。




「…ふー…」

朝から取り組んでいた書類仕事が、ようやく一段落ついた。

休みなしで、ノンストップで書類と向かい合っていたものだから、さすがに疲れた。

肩と首をゆっくりと回すと、こき、こき、と小気味よい音がした。

…あー、疲れた。

…でも。

仕事が多いっていうのは、確かに疲れるけれど。

余計なことを考えずに済む。…のは、良いことだよな。

何もしてなかったら、つい考えてしまうからな。

今頃あいつら…大丈夫だろうか、って。

そろそろ、旧アーリヤット領に着いたのだろうか。

今、旧アーリヤット皇国領は、どうなってるんだろうな?

キルディリア流の支配が進み、魔導師と非魔導師の対立が深まっ、

「じゅーりーすー。あーそーぼー」

「…」

深く、思考の沼にハマってしまいそうになったところを。

超絶空気読めない系女子、ベリクリーデが。

無理矢理、強引に、引っ張って連れ戻してくれた。

いつもだったら、「今考え事してたんだが!?」と怒るところだが。

今日ばかりは、良くやったと褒めてやろう。

「…よく来たな、ベリクリーデ。助かったよ…」

余計なことを考えずに済んだよ。

「ほぇ?」

まぁ、本人にはまったく、自覚がないようだが。

「良いんだよ、こっちの話だ」

「そっか」

「…で、何の用だ?」

「ジュリス、私ね。これから、おやつを買いに行くの」

ほう?

「私いっつも、自分の好きなおやつばかり買ってきてるでしょ?」

「はぁ…。それは…別に良いんじゃないか?」

お前が食べるおやつなんだから、自分の好きなおやつを買ってくれば良い。

…キャロライナ・リーパーは、さすがにやめた方が良いと思うけど。

「だから今日は、ジュリスのリクエストを聞こうと思って」

「…俺の?」

「カプリッコとじゃがりっこ、どっちが良い?」

「…」

…その2択なのか?

リクエストになってなくね?

「どっちも欲しい?」

「いや…別に…」

「分かった。じゃあ、カプリッコのじゅーばいハバネロ味と、じゃがりっこのひゃくばいハラペーニョ味を買ってき、」

「ちょっと待ったぁぁ!」

「ふぇっ?」

俺は、駆け出そうとするベリクリーデの肩を、ガシッ、と掴んだ。

ちょっと待て。早まるな。

絶対に駄目だ。

10倍ハバネロって何だ。100倍ハラペーニョって何だよ?

めちゃくちゃヤバそうなのは、よく分かる。

ベリクリーデに、そんなおやつを買わせる訳には行かないということも。