既に、もう見てられない状況になってるんだが。
あろうことか。
魔導師憲兵は、転がり出てきたパンの包みを。
この中年女性の子供達が、首を長くして待っているであろう、大事な食糧を。
長靴の踵で、ぐしゃっ、と踏み潰した。
「ふん、こんなもの…」
「あぁぁっ…!」
女性の、悲鳴にも似た絶望の呻き声。
自分の子供達の命を繋ぐ為に必要な、大事な食糧を踏み躙られたのだ。
「『青カード』のガキなら、どうせそいつらも『青カード』なんだろ?…ふん、そんな役立たずのガキ共、豚の餌でも食ってろ」
魔導師憲兵は、そう言ってせせら笑った。
「あぁ…。あぁ、なんてことを…!」
無惨に踏みにじられ、台無しになった食糧を。
それでも女性は、何とか泥を払い、掻き集めようとしたが。
「さぁ、立て。こっちに来い!」
「いやっ…!やめて!やめてください!」
「抵抗するな。さっさとしろっ!」
「ひぐっ…!」
痺れを切らした魔導師憲兵は、杖を取り出し。
中年女性の剥き出しの肩に、煙草の火を押し付けるように。
杖の先に炎を纏わせ、女性の皮膚に押し付けた。
じゅっ、と肉の焦げる音と、女性の痛々しい悲鳴がこだました。
あまりの痛みに、女性は気を失ったらしく。
ぐったりと、死体のようになった彼女を、乱暴に縛り上げ。
数人の魔導師憲兵は、中年女性を引き摺って連れて行ってしまった。
…。
…信じられない。
信じられないことが、今、俺の目の前で起こった。
「お…お、お前ら…」
俺は、この場を立ち去ろうとする魔導師憲兵を、走って追いかけ。
その背中に、渾身の飛び蹴りを食らわせ。
「食べ物を粗末にするんじゃねぇ。魔導師じゃないからって、人様を馬鹿にするんじゃねぇ!!」…と。
思いっきり一喝して、そして急いで、女性の火傷の手当てをしたかった。
と言うか、間違いなくそうしていただろう。
…ルイーシュに、手首を掴まれていなければ。
「…キュレムさん。気持ちは分かりますけど。物凄く分かりますけど。…俺も今、多分、まったく同じことをしたいと思ってますけど」
「…」
「今はまだ、その時ではありません」
「…ちっ…く、しょう…」
悔しいけど、ルイーシュの言う通りだ。
今ここで、怒りを爆発させても。
それは俺の自己満足であって、誰の救いにもならない。何の解決にもならない。
ただ、俺の怒りが晴れるだけで。
「…キュレム様、ルイーシュ様。お見苦しいところをお見せしました」
ブラマンジュちゃんが、俺とルイーシュに謝罪した。
「まったくだよ…。畜生、何なんだアレは?」
「は、はい…。現在アーリヤット領では、戦後の混乱で流通が滞り、都市部での食糧不足が続いているようで…」
「…」
…そりゃ、そうもなるだろう。
他国に侵略戦争を仕掛けられれば。
「食糧価格が高騰し、貧しい非魔導師国民は、あのように、ヤミの食糧を購入する者が後を絶たないとか…」
「…」
「ですが、ご安心ください。本国から移住してきたキルディリア魔導師や、アーリヤット魔導師にも、食糧を優先確保しておりますので」
あのさ。
…そんな話をされても、全然安心出来ないんだが?
自分の心配をしてんじゃないんだよ。
食糧の確保なんて…一番大切なことだろうに…。それさえ、満足に出来ていないとは。
何をやってるんだ。アーリヤット総督府ってのは。
あろうことか。
魔導師憲兵は、転がり出てきたパンの包みを。
この中年女性の子供達が、首を長くして待っているであろう、大事な食糧を。
長靴の踵で、ぐしゃっ、と踏み潰した。
「ふん、こんなもの…」
「あぁぁっ…!」
女性の、悲鳴にも似た絶望の呻き声。
自分の子供達の命を繋ぐ為に必要な、大事な食糧を踏み躙られたのだ。
「『青カード』のガキなら、どうせそいつらも『青カード』なんだろ?…ふん、そんな役立たずのガキ共、豚の餌でも食ってろ」
魔導師憲兵は、そう言ってせせら笑った。
「あぁ…。あぁ、なんてことを…!」
無惨に踏みにじられ、台無しになった食糧を。
それでも女性は、何とか泥を払い、掻き集めようとしたが。
「さぁ、立て。こっちに来い!」
「いやっ…!やめて!やめてください!」
「抵抗するな。さっさとしろっ!」
「ひぐっ…!」
痺れを切らした魔導師憲兵は、杖を取り出し。
中年女性の剥き出しの肩に、煙草の火を押し付けるように。
杖の先に炎を纏わせ、女性の皮膚に押し付けた。
じゅっ、と肉の焦げる音と、女性の痛々しい悲鳴がこだました。
あまりの痛みに、女性は気を失ったらしく。
ぐったりと、死体のようになった彼女を、乱暴に縛り上げ。
数人の魔導師憲兵は、中年女性を引き摺って連れて行ってしまった。
…。
…信じられない。
信じられないことが、今、俺の目の前で起こった。
「お…お、お前ら…」
俺は、この場を立ち去ろうとする魔導師憲兵を、走って追いかけ。
その背中に、渾身の飛び蹴りを食らわせ。
「食べ物を粗末にするんじゃねぇ。魔導師じゃないからって、人様を馬鹿にするんじゃねぇ!!」…と。
思いっきり一喝して、そして急いで、女性の火傷の手当てをしたかった。
と言うか、間違いなくそうしていただろう。
…ルイーシュに、手首を掴まれていなければ。
「…キュレムさん。気持ちは分かりますけど。物凄く分かりますけど。…俺も今、多分、まったく同じことをしたいと思ってますけど」
「…」
「今はまだ、その時ではありません」
「…ちっ…く、しょう…」
悔しいけど、ルイーシュの言う通りだ。
今ここで、怒りを爆発させても。
それは俺の自己満足であって、誰の救いにもならない。何の解決にもならない。
ただ、俺の怒りが晴れるだけで。
「…キュレム様、ルイーシュ様。お見苦しいところをお見せしました」
ブラマンジュちゃんが、俺とルイーシュに謝罪した。
「まったくだよ…。畜生、何なんだアレは?」
「は、はい…。現在アーリヤット領では、戦後の混乱で流通が滞り、都市部での食糧不足が続いているようで…」
「…」
…そりゃ、そうもなるだろう。
他国に侵略戦争を仕掛けられれば。
「食糧価格が高騰し、貧しい非魔導師国民は、あのように、ヤミの食糧を購入する者が後を絶たないとか…」
「…」
「ですが、ご安心ください。本国から移住してきたキルディリア魔導師や、アーリヤット魔導師にも、食糧を優先確保しておりますので」
あのさ。
…そんな話をされても、全然安心出来ないんだが?
自分の心配をしてんじゃないんだよ。
食糧の確保なんて…一番大切なことだろうに…。それさえ、満足に出来ていないとは。
何をやってるんだ。アーリヤット総督府ってのは。



