神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

…この、バカちんは。

「お前な…」

「ほぇ?ジュリス、どうしたの?何だか…頭から、キノコ生えそう」

何だと?

…どういう意味?

「何か悩み事?疲れてるの?よしよし」

ベリクリーデは、俺のもとに寄ってきて。

何故か、俺の脳天をよしよし、と撫で始めた。

「大丈夫だよー。キノコ、生やさなくて良いんだよ」

「…生える訳ねーだろ…」

俺は人間なんだぞ。

シイタケの原木と一緒にするな。

「だって、ジュリス…。キノコが生えそうなくらい、じめじめした顔してるんだもん」

「それは…。…別に、そんなことは…」

「…」

「…まぁ、ちょっとはあるかもしれないけど…」

…心配なんだよ。

「お前だって分かるだろ?…キュレムとルイーシュのこと、心配してないのか?」

「キュレムとルイーシュ?」

「あぁ。二人共、アーリヤット皇国に行くって…。それに、重大な情報を手に入れたって」

「…重大な情報…」

そうだよ。

その知らせを聞いて、憂鬱な気分になって。

ベリクリーデ曰く…「キノコが生えそうな顔」になってたんだよ。

「何もしてやれないのが、もどかしいよな…。今頃…大変な目に遭ってなきゃ良いが…」

「大丈夫だよ、ジュリス」

何故か。

ベリクリーデは、はっきりとそう言った。

は?

「アーリヤット皇国は…。…女王様にとって要らないから。キュレムもルイーシュも、安全なところに行くんだよ」

「は…?…え?」

「むしろ…これから危険なのは、私と…」

…どういうこと?

お前、さっきから何を…。

「…何なんだ?ベリクリーデ、お前…。何を知ってるんだ?」

「…ふぇ?」

「大丈夫って…何が大丈夫なんだ?キュレムとルイーシュに、何が…」

「…??」

…きょとーん、と首を傾げるベリクリーデ。

…駄目だ。これは分かってない顔だ。

そういや、ベリクリーデは元々こういう奴だったな。

時折、妙に意味深なことを言うけれど。

それにどんな意味があるのか、どういうことなのか、本人にも分かってなくて。

ただ、直感で、思ったことを口にしているだけなのだ。

問題は、その直感が…物凄く当たる、ってところなんだよな…。

…ベリクリーデが「大丈夫」って言うなら、きっと大丈夫なんだろう。

そう思って、信じるしかない。

キュレムとルイーシュが、無事にルーデュニア聖王国に戻ってくることを。

最悪、アーリヤット皇国のことも、キルディリア魔王国のことも捨てて良い。

だから、命だけは無事に…二人揃って戻ってきてくれ。

命を優先しろ、ってシュニィに命じられたの、あいつら忘れてないよな…?

「…ジュリスが、またキノコ顔になってる…」

キノコ顔言うな。

「ねぇ、ジュリス」

「…何だよ?」

「おやつ買ってきたの。一緒に食べよ。…はい、ビスッコ」

と言って。

ベリクリーデは、小箱に入ったビスケットのお菓子を取り出した。