神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

…シディ・サクメに連れられ、地下室を出てから。

…なんか、もう。

この10分ちょっとで、げっそりと疲れたな。

しかし、まだ帰らせてはくれなかった。

「キュレム様、ルイーシュ様。この後、イシュメル女王陛下からお話があるそうです」

…げ。

この、メンタル的に超疲れてる時に。

今度は、女王陛下直々に話がある、だと?

…勘弁してくれよ。

しかし、女王から「話がある」と言われたら。

「嫌です!無理です!帰ります!」…とは、言えない。

さすがにな?

俺達の苦難はまだ続く。

…ナツキ様と話してめちゃくちゃ動揺していたこと、イシュメル女王にバレないようにしないと。

「…分かった。会うよ」

そう答える以外に、俺に選択肢などない。

俺とルイーシュは、王の間に連れて行かれた。




…すると。

「陛下。キュレム様とルイーシュ様をお連れしました」

「おぉ…。…よく来たの、我が国の新たな上級魔導師殿よ」

シディ・サクメに続いて、俺とルイーシュが王の間に入ると。

俺達の姿を見るなり、イシュメル女王は顔を綻ばせた。

…この表情だけ見ていると、フユリ様に負けず劣らず、気の良さそうな国王に見えるんだけどな。

この人の…「本性」を知っている身としては。

この笑顔さえも、胡散臭いと感じてしまう。

日頃の行いって、やっぱり大切なんだなぁ。

だって、アーリヤット皇国を侵略したのも、ナツキ様を捕らえて地下に閉じ込めてるのも。

全部、このイシュメル女王の命令なんだぜ?

この笑顔の裏で、あんなあくどいことを思いつくんだもんな。

この人の腹の中は、きっと闇のように漆黒だ。そうに違いない。

しかし、そんな嫌悪を態度に出してはいけない。

「サクメよ、おぬしは下がれ。新たな上級魔導師殿と、三人だけで話したい」

「仰せのままに」

女王の命により。

俺達をここまで連れてきたシディ・サクメは、丁寧にお辞儀をして、王の間を辞した。

…追い出されちゃったよ。可哀想に。

…で、女王とルイーシュと俺と三人で、置き去りにされた訳だが。

「…何か御用ですか?」

「なに、そう警戒するでない」

警戒もするってもんだろ。

…あんなもの…ナツキ様…を見せられた後では。

ついうっかり口を滑らせたら、俺達もナツキ様の隣の牢に閉じ込められかねない。

…怖っ。

「かしこまる必要もないぞ。わらわは、おぬしらの実力を買っておるのじゃ。もっと、気軽に話して良いぞ」

「…それは光栄だな」

随分と、よいしょしてくるじゃないか。

その期待が、逆に怖いんだが?