神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

…え?

…なんで今、ジャマ王国の名前が出てくるんだ?

「…どういうことだよ?」

「あの戦争に、ジャマ王国が関わっていたんですか?」

「そうだ。ジャマ王国の暗殺者部隊が、あの戦争に参加していた」

「…」

…嘘だろ。

俺とルイーシュは、互いに顔を見合わせた。

…まさか。

「確か、なんですね?」

「見間違えるはずがないだろう。黒装束を着た、ジャマ王国の暗殺者組織…」

「『アメノミコト』のことですか?」

「そうだ。どうやら、傭兵としてキルディリア魔王国軍に雇われ、アーリヤット皇国に攻撃を仕掛けてきた」

「…」

「…異国の暗殺者共が。キルディリアと組んで…狡猾な真似を」

ナツキ様は、吐き捨てるようにそう言った。

…シュニィと無闇が、先に和平交渉の為にイシュメル女王に会いに来た時。

シュニィ曰く、イシュメル女王は意味深なことを言っていたという。

『HOME』の脅威を伝えても、まったく狼狽えることはなかったと。

…それは、あの時点で既に、『アメノミコト』という切り札を持っていたから…だったのか。

まさか、ジャマ王国とキルディリア魔王国が手を組むなんて、誰も想像していなかった。

だけど…これで辻褄が合う。

『アメノミコト』…特に、エリート暗殺部隊の『終日組』という暗殺者達は。

聖魔騎士団の精鋭にも、そして『HOME』の精鋭にも引けを取らない。

だって、あの令月君とすぐり君の古巣だろ?

あの二人の元暗殺者の実力は、何度も一緒に戦った俺達も、よく知っている。

それに、『アメノミコト』は軍隊ではない。

国の為ではなく、金の為に依頼されて動く、暗殺者組織だ。

組織の利益の為なら、他国の戦争にも参加する。

そこに目をつけて、イシュメル女王は『アメノミコト』に協力を依頼し、彼らを雇い、戦争に参加させ。

キルディリア魔王国軍、そして『アメノミコト』の暗殺者連合軍が、一気にアーリヤット皇国に侵攻。

ナツキ様の想定を遥かに超える進軍速度で、あっという間に皇都を落としてしまった…。

そして、用を済ませた『アメノミコト』は、さっさとジャマ王国に戻り。

イシュメル女王から渡された報酬を手に、『アメノミコト』の頭領…鬼頭夜陰だったか。

あいつは今頃、札束抱えてウハウハ、ってか。

…なんてことだよ。

そりゃ、『HOME』だけで持ち堪えられるはずがない。

しかも…キルディリア・『アメノミコト』連合軍の恐ろしさは、これだけでは終わらない。

だって、『アメノミコト』は、ルーデュニア聖王国とも対立しているのだ。

だから、つまり、あの、その。

もう一度キルディリアと『アメノミコト』が手を組んで、今度はルーデュニア聖王国に、ってことも。

…充分、その可能性はある。

「…っ!!」

ヤバい。絶対不味いよ、これ。

政治に疎い、アホの俺でも分かる。

これは非常に不味い状況だ。

最早、ルーデュニア聖王国も…対岸の火事ではいられない。

いつその火の粉が、「こちら側」に振りかかってくるか分からない状態なのだ。