「…」
ルイーシュに、辛辣な言葉を投げつけられ。
シディ・サクメは、いかにも不機嫌そうな表情で、俺達を睨んでいた。
…睨むなよ。
…しかし。
…あまり大人げないことをするのは、俺としても望むところではない。
それに…俺達にそんな約束をさせてまで、存在を隠しておきたい人物…。
一応これでも、自分、スパイだから?
今のところ、スパイとして有益な情報は何一つ手に入れてない、ポンコツスパイなんだが。
興味はあるね。
「…分かった。意地悪言って悪かったよ」
ここは、俺が先に折れてやるとしよう。
スパイじゃなかったら、絶対折れなかっただろうけど。
「他言するなってんなら、約束するよ。自分の胸のうちにだけ留めておく」
「…確か、ですね?」
「はいはい。確か確か。ほんとほんと。黙っといて欲しいことなら、黙っとくよ」
嘘だけどな。
「ルイーシュ様も、同じですね?」
「大丈夫ですよ。俺、口は貝のように固く、足は象のように重いですから」
動けって言っても、なかなか動かないもんな。お前。
「…ぞ、象…?」
「…何か問題、あります?」
「…いえ。分かりました。ではご案内致します」
納得してもらえたようで何より。
「こちらです」
そう言って。
シディ・サクメが俺達を案内したのは、先日までずっと住んでいた、客室の紫水晶の間…ではなく。
その客室の前に通り過ぎ、階段を降りた。
…この辺は、王宮に滞在していた頃にも、一度も来なかったな。
別に、立ち入りを禁止されていた訳じゃない。
だが、家主がいない間に、王宮の中を探り回るような真似をするのは、さすがに憚られて…。
それに、あまり怪しい動きを見せると、疑われると思って。
不必要にきょろきょろしてたら、シディ・サクメの疑いを強めることになる。
俺は出来るだけ、平静を装ってついていった。
やがてサクメは、廊下の突き当たり…行き止まりの壁の前で立ち止まった。
「…」
…まさか、道に迷った?
そんなことはない。
俺は、すぐに気づいていた。
そして、俺が気づいているということは、空間魔法のプロであるルイーシュも、当然気づいている。
…この、壁。
一見すると、ただの壁にしか見えないが。
「ここ、空間が歪んでますね」
と、ルイーシュが冷静に言った。
「…はい、そうです」
サクメも、すぐに認めた。
…そうなのだ。
この場所だけ、不自然に空間が歪んでいる。
お得意の幻覚魔法で、ただの壁…のように見せているけれど。
実際には、この奥にまだ道がある。
道…と言うか、階段だが。
下に続く階段。
恐らくは…王宮の地下室に続く階段だろう。
…わざわざ空間を捻じ曲げ、幻覚魔法で覆って。
こんなつまんない小細工までして、地下室の存在を隠そうとしているなんて。
ほんと…いちいちやることが卑怯で狡猾だよ。この国の人間は。
ルイーシュに、辛辣な言葉を投げつけられ。
シディ・サクメは、いかにも不機嫌そうな表情で、俺達を睨んでいた。
…睨むなよ。
…しかし。
…あまり大人げないことをするのは、俺としても望むところではない。
それに…俺達にそんな約束をさせてまで、存在を隠しておきたい人物…。
一応これでも、自分、スパイだから?
今のところ、スパイとして有益な情報は何一つ手に入れてない、ポンコツスパイなんだが。
興味はあるね。
「…分かった。意地悪言って悪かったよ」
ここは、俺が先に折れてやるとしよう。
スパイじゃなかったら、絶対折れなかっただろうけど。
「他言するなってんなら、約束するよ。自分の胸のうちにだけ留めておく」
「…確か、ですね?」
「はいはい。確か確か。ほんとほんと。黙っといて欲しいことなら、黙っとくよ」
嘘だけどな。
「ルイーシュ様も、同じですね?」
「大丈夫ですよ。俺、口は貝のように固く、足は象のように重いですから」
動けって言っても、なかなか動かないもんな。お前。
「…ぞ、象…?」
「…何か問題、あります?」
「…いえ。分かりました。ではご案内致します」
納得してもらえたようで何より。
「こちらです」
そう言って。
シディ・サクメが俺達を案内したのは、先日までずっと住んでいた、客室の紫水晶の間…ではなく。
その客室の前に通り過ぎ、階段を降りた。
…この辺は、王宮に滞在していた頃にも、一度も来なかったな。
別に、立ち入りを禁止されていた訳じゃない。
だが、家主がいない間に、王宮の中を探り回るような真似をするのは、さすがに憚られて…。
それに、あまり怪しい動きを見せると、疑われると思って。
不必要にきょろきょろしてたら、シディ・サクメの疑いを強めることになる。
俺は出来るだけ、平静を装ってついていった。
やがてサクメは、廊下の突き当たり…行き止まりの壁の前で立ち止まった。
「…」
…まさか、道に迷った?
そんなことはない。
俺は、すぐに気づいていた。
そして、俺が気づいているということは、空間魔法のプロであるルイーシュも、当然気づいている。
…この、壁。
一見すると、ただの壁にしか見えないが。
「ここ、空間が歪んでますね」
と、ルイーシュが冷静に言った。
「…はい、そうです」
サクメも、すぐに認めた。
…そうなのだ。
この場所だけ、不自然に空間が歪んでいる。
お得意の幻覚魔法で、ただの壁…のように見せているけれど。
実際には、この奥にまだ道がある。
道…と言うか、階段だが。
下に続く階段。
恐らくは…王宮の地下室に続く階段だろう。
…わざわざ空間を捻じ曲げ、幻覚魔法で覆って。
こんなつまんない小細工までして、地下室の存在を隠そうとしているなんて。
ほんと…いちいちやることが卑怯で狡猾だよ。この国の人間は。



