神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

しかし、シルナ相手に、そんな当然の理屈は通用しない。

何せシルナは、チョコレートは世界を救う、万能料理だと思ってるからな。

それはお前だけだ。

「本当に美味しいから!ね、食べてみて。美味しいよ!」

「え、えぇと…。…これ、何が入ってるんですか…?」

「え?チョコ生地のパンに、生チョコクリームと、板チョコが3枚!」

「…。…重そうですね…」

シュニィ、遠い目。

…言って良いんだぞ、シュニィ。

「そんなもの要りません!一人で食べなさい!」って。

イレースだったら、絶対言ってるな。

ついでに、嫌味の一つや二つや100個くらいは、絶対言ってる。

しかしシュニィは、優しいので。

「そ、そうですか…。それじゃあ…その、一口だけ…」

敬愛する学院長、シルナの勧めともあれば、断れないのか。

シュニィは震える手で、えげつないチョコサンドを手に取り。

ネズミが齧るみたいに、小さな一口でチョコサンドを口に入れた。

…あぁ…。止めてやれなかった。ごめんな、シュニィ…。

せめて、すぐに吐き出せるように、箱ティッシュを装備しておこう。

「どう?どう?美味しいでしょ?」

すると。

困り顔だったのが一変。

意外なことに、シュニィは目を輝かせた。

「あ…。本当だ。美味しい…」

「でしょーっ?」

マジかよ。

「シュニィ…。無理しなくて良いんだぞ」

「こんなもん食えるかっ!」って。

シルナの顔面に投げつけても良い。俺が許す。

しかし。

「いえ…。本当に美味しいですよ」

「えっ…」

「サンドイッチのパンとクリームが柔らかくて、中に挟んである板チョコがパリパリで…。凄く食感が良いです」

…そうなんだ。

…そういえば、モナカの中に板チョコを挟んだアイスクリーム、とかあったよな。

あれと同じ原理?

「でしょ?でしょ?」

超ムカつく。シルナのドヤ顔。

「ただ…ちょっと…いえ、かなり甘くて…その、たくさんは食べられないですけど…」

「そ、そうか…。…そりゃそうだよな…」

一口目は美味しいけど、途中からくどくて、食べられなくなるパターンな。

そんなにこってりチョコまみれじゃ、仕方ないよ。

「え、そう?このくらい普通だと思うけど…」

とか言いながら、シルナは平気な顔をして、ぱくぱくとチョコサンドを食べていた。

シルナは…もう、舌が砂糖で馬鹿になってるから。

いくら甘くても、いくらでも食べられるんだろう。

「…何だか、羽久が私に失礼なこと考えてる気がする…」

事実だろ。

「もう少し…その、チョコクリームを甘さ控えめにして…。挟んである板チョコも、せめてブラックチョコにしてみては…?」

「え、なんで?それじゃ甘くなくなるじゃない」

「…」

シュニィの、精一杯のアドバイスも、シルナを前にはこの通り。

シルナはもう駄目だ。甘いものを食べ過ぎて、味覚が馬鹿になってる。

…それどころか。

「あ、そうだ。おやつを食べたら、飲み物も必要だよね?」

「え?え、あの、」

「ちょっと待っててね。今、ホットチョコレート淹れてくるから!」

シルナ、満面の笑み。

狂気のチョコサンドに、更に飲み物までホットチョコレートとは。

「ちょっ…。が、学院長先生、ちょっと、まっ…!」

「大丈夫、大丈夫!すぐ淹れてくるからね!」

「…」

止める間もなく、シルナはホットチョコレートを用意しに出ていってしまった。

…なんか、もう。

本当ごめんな?シュニィ…。