神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

なんとも気まずい空気で、キルディリア国立中央図書館を出た後。

「エリトール、ブラマンジュの二人は先に帰ってください」

シディ・サクメが、二人の見習い魔導師に命じた。

…何?

「今日はこれより、私がキュレム様とルイーシュ様をご案内させていただきます」

おいおい。サクメ君よ、なんだそれ。

聞いてないぞ。

ここまで連れ回しておいて、「お前らもう用済みだから、帰れ」なんて。

このぞんざいな扱いには、二人共、さすがに抗議するんじゃないかと思ったが。

「分かりました」

「では、先にお屋敷に戻らせていただきます」

二人共、驚くほど聞き分けが良かった。

その時、気づいた。

…そういや、このシディ・サクメも俺達と同じ、上級魔導師。

通称、『金カード』の持ち主だ。

一方エリトール君とブラマンジュちゃんは、将来上級魔導師になることを見込まれて、見習い魔導師に選ばれているものの。

今の時点では、二人共、まだ一般魔導師…『銀カード』である。

この証明書の色による分類は、キルディリア魔王国では、容易に変えることの出来ない絶対的なもの。

年齢、性別、人種に関係なく。『銀カード』は、『金カード』に逆らえない。

従って彼らは、その命令が何であろうと。

目上の人間である『金カード』に命じられれば、素直に大人しく従う。

それは至極当然のことであり、この国においては、変えることの出来ない摂理。

そんな環境で育った彼らは、上級魔導師の命令には何でも従うことが当たり前になっている。

故に、どんな理不尽なことを命じられても、素直に頷いて、その通りに従うのだ。

…家畜や奴隷と一緒だな。

「…」

追い返されたエリトール君とブラマンジュちゃんは、丁寧にお辞儀をして、その場を辞した。

…気の毒に。

…で。

「…お偉い先輩上級魔導師様が、俺達に何の用だ?」

俺は、シディ・サクメにそう尋ねた。

二人を先に返したってことは、一般魔導師に過ぎないあの二人には、聞かせたくない話なんだろう?

「先程も言った通りです。ここからは、私がお二人を案内させていただきます」

「案内…?何処に?」

「ファニレス王宮に、です」

…王宮?

「これは、女王陛下の命です。お二人に会っていただきたい人物がおります」

女王…イシュメル女王直々の命令?

しかも、俺達に会って欲しい人物って…。

何だか、途端に身構えてしまった。

「誰のことだよ?」

「会っていただければ分かります」

…ちっ。

今この場で教えて、心の準備をさせてくれる優しさはない、ってことね。

あるいは、いきなり「その人物」とやらに会わせて。

俺とルイーシュがどんな反応をするか、つぶさに観察しようとしているのかもしれない。

…ったく、性格の悪い連中だよ。

この国の魔導師は、みんなそうなのか?

「…キュレムさん。仕方ないですよ、行きましょう」

俺より先に覚悟を決めたルイーシュが、そう言った。

…だな。

「…分かった。ついていくよ」

「ありがとうございます」

じゃあ、行くとしようか。

久々に、ファニレス王宮に。