神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

残念ながら俺、そんなに素直じゃないし、真面目でもないんですよね。

俺が書いたつまらない魔導書を読んで、あなたは凄い人だ、尊敬している、と言われても。

「知らんがな」というのが、一番の感想。

…知りませんよ、あなたが何を思い、何に憧れ、何を目指そうとも。

あなたが進む道と、俺が進む道…その二つが、交わることは決してない。

俺は今でも、ルーデュニア聖王国の魔導師なのだから。

「…あ、っと…。すみません、つまらない話をしてしまって」

さっきまで興奮していたエリトールさんが、ふと我に返った。

本当につまらない話でしたよ。

「今夜は、もう遅いです。ルイーシュ様、そろそろ寝室に…」

と、エリトールさんが言いかけた。

…その時だった。

「…貴様!捕まえたぞ!」

「きゃぁぁっ!」

屋上から見下ろす、住宅街の通りから。

何やら、不穏な怒鳴り声と、叫び声が聞こえてきた。

…!?

「…何事です?」

反射的に、俺はビーチベッドから起き上がり。

屋上の柵から、下の様子を伺った。

数人の、警備員らしき男達が。

みずほらしい服を着て、痩せ細った若い女性を取り囲み。

文字通り、首根っこを掴んでいるではないか。

さっきの悲鳴、あの女性のものか。

「ここが何処だか分かってるのか?上級魔導師様の住まわれる場所だぞ!貴様如き『青カード』が、立ち入って良い場所じゃないんだ!」

警備員は、そう叫ぶなり。

首根っこを掴んだ女性の側頭部を、ゴッ、と殴りつけた。

…。

「お許しください。お許しください。もう入ってきたりしませんから…!」

殴られながらも、女性は必死に両手を合わせ、拝むようにして慈悲を乞うていた。

「薄汚い『青カード』めが!身の程を知れ!」

「この馬鹿女、痛い目を見なきゃ分からないんだ」

「収容所にぶち込んでやる。連れてこい!」

男達は次々にそう叫び、女性を引き摺って連れて行こうとした。

途端、女性の顔が青ざめるのが見えた。

「お許しください!それだけはお許しください、魔導師様…!私には、家で私の帰りを待っている子供が…!」

「知ったことか。貴様の子供なら、そいつも『青カード』だろう?」

「そうだ。欠陥品の『青カード』はな、我が国には必要ないんだ!」

「いやぁぁぁ!助けてっ…!誰か、助け…!」

「…馬鹿め」

女性を引き摺っていた警備員の男が、せせら笑った。

「人間の出来損ない、無価値な『青カード』を、誰が助けるって言うんだ?」

…そう言って。

警備員達は、必死に抵抗しようとする女性を、ずるずると引き摺り。

そのまま、通りの向こうに消えていった。