神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

それなのに、エリトールさんは興奮した様子で、俺の魔導書の感想を熱く語ってくれた。

「あの本を読んだ時の感動は、今でも忘れられません。素晴らしい魔導書でした。まだまだ未知の魔法だった空間魔法を、あれほど丁寧に分析されて…」

はぁ。

「空間魔法には、大きな可能性がある…。当時、まだ未熟な魔導学生だった私に、自らの目指すべき道を示してくれたのです」

「そうですか…。それは良かったですね…」

あの魔導書が、ルーデュニア聖王国のみならず。

キルディリア魔王国にまで流れ流れて、こうして今、自分の著書を読んでくれた読者と出会うとは。

人生って、分からないものですね。

でも本当に、大した本じゃないんで。思い入れも特にないし。

記憶の中から消してくれても良いですよ?

俺の本なんかより、覚えておくべき大事なことが、世の中にはたくさんある。

しかし、エリトールさんは興奮のあまり、鼻息を荒くして。

「あの時、この素晴らしい魔導書を書いた作者のルイーシュ様という方は、どんな方なのだろうかと…。いつかお目にかかりたいと…ずっと、そう思っていたんです」

「はぁ…。それじゃ、夢が叶いましたね」

「はい、そうなんです…。しかもこうして、上級魔導師となられたルイーシュ様の、一番近くでお世話させていただく、見習い魔導師の栄誉を賜り…」

「…」

「本当に光栄です。心からお仕えさせていただきます、ルイーシュ様」

「…」

…俺が、キュレムさんくらい真面目で。

かつ、本気で、キルディリア魔王国に亡命した身であれば。

きっと、誇らしい気持ちになっていたんでしょうけどね。