神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

こうして。

イシュメル女王との面会の後、一時間後には。

俺とルイーシュは、それぞれ、金色の証明書を受け取った。

証明書には、イシュメル女王直筆のサインがあった。

イシュメル女王の名において、この者を上級魔導師に任命する、というサインである。

ぴかぴかに輝く、その証明書をネームホルダーに入れると。

少しは、誇らしい気持ちになるかと思ったのだが。

…ねずみ色がこがね色になっただけで、それ以上の感慨は湧かないな。

ルイーシュも、つまらなさそうな顔で証明書を眺めていたから。多分、俺と同じ気持ちだろう。

でも、この証明書。

キルディリアの魔導師にとっては、夢のまた夢、全ての魔導師の憧れなんだろうな。

…こんなものが、ねぇ。




そして、上級魔導師の証明書をもらった俺達のもとに。

銀色のカードをぶら下げた若い男女が、訪ねてきた。

「こんにちは。キュレム様とルイーシュ様ですね?」

…えーと。

「…誰?」

「あ、申し遅れました。私は今日から、ルイーシュ様の見習い魔導師になる、エリトールと申します」

「私はキュレム様の見習い魔導師に選ばれました。ブラマンジュと申します」

若い男が先に頭を下げ、その次に女の子の方がお辞儀をした。

…見習い魔導師?

また、よく分からんワードが出てきたぞ。

「何ですか。見習い魔導師って」

「お二人は外国出身の魔導師様なんですよね。…それでは、説明させていただきます」

おう。そうしてくれ。

訳分からんから。

「我が国の上級魔導師様には、後進育成と、身の回りのお世話をする為に、一人以上、見習い魔導師が付くことになってるんです」

「分かりやすく言いますと…師匠と弟子のようなものです」

エリトール君が説明し、ブラマンジュちゃんが捕捉した。

師匠と弟子…。

上級魔導師は師匠として、必ず一人以上の弟子を取らなければならない。…ってことか。

そんな決まりがあるの?聞いてないぞ?

「見習い魔導師に選ばれ、上級魔導師様の指導を受けながら、身の回りのお世話をさせていただけるのは、キルディリア魔王国の魔導師にとって、この上ない名誉です」

「不束者ですが、ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いします」

ぺこり、と頭を下げる、エリトール君とブラマンジュちゃん。

…は、はぁ。

そんなの聞いてないし。弟子なんて要らないし。スパイ活動の邪魔だし。

教えるの下手だし。身の回りの世話くらい自分で出来るし。

何より、自分の周りをうろちょろされるのは、目障り極まりない。

故に、「あ、そういうのいいんで。帰ってください」…と、言いたいところだが。

「…」

「…」

俺とルイーシュは、互いに無言で視線を交わした。

長い付き合いだからこそ、分かる。

俺の心の内∶「なぁ、これどうしたら良いと思う?」

ルイーシュの心の内∶「鬱陶しいですけど、我々も上級魔導師に任命された以上、断るに断れないのでは?」

俺の心の内∶「…ですよねー…」

という会話を、アイコンタクトで交わした後。

「…分かった。えーと…よろしく」

そう言うしかないじゃないか。

言えないじゃないか。本当のことなんて。

「はい。こちらこそ宜しくお願い致します」

こうして。

俺達は上級魔導師に任命されたついでに、弟子まで取ることになったのだった。