神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

「ご存知の通り、俺もルイーシュも、聖魔騎士団魔導部隊の大隊長だった。聖賢者…シルナ・エインリーに見出されて、イーニシュフェルト魔導学院に入って…。そこからエスカレーター式に、大隊長にまでなったけど…」

「…」

「元々俺は、そういうご立派で、ご大層な役職には向いてないんだ。それなのに、魔導大隊長だからって、ご近所のスズメバチ退治から、冥界遠征まで命じられて…。心底、うんざりしてたんだよ」

俺はわざとらしく、はぁ、と溜め息をついてそう言ってやった。

イシュメル女王は、扇で口元を隠しながら聞いていた。

…顔を隠すんじゃねえよ。表情が見えないと、何考えてるか分からない。

俺の大根な演技、バレてないよな?

バレてない前提で、話を進めよう。

「魔法を使いたくないってんじゃない。俺達魔導師は、魔法を使うのが仕事だからな。…でも、ルーデュニア聖王国では、魔導師の立場は弱い。ただの便利屋くらいにしか思われてない」

「あぁー…。それはありますね。俺達、しょっちゅうつまんない任務に駆り出されては、軽率に魔法使わされますもんね」

ルイーシュは、突然何言ってるんだ、とは言わず。

俺の意図を察して、俺の発言に合わせてくれた。

ナイス。

その調子で頼むぞ。

「俺達二人共、これまで結構な努力をして、ここまでの地位に上り詰めた訳よ。それなのに…今の俺達の扱いはなんだ?学院ちょ…いや、聖賢者に付き合わされて、何度となく命の危機には晒されるし…」

「冥界に連れて行かれた時は、さすがに死を覚悟しましたよね」

「まったくだ。それなのに、給料は安いし、休みはないし、おまけに女にもまるでモテない」

「それは、キュレムさんの問題のように思いますけど」

ちょっと黙っててくれないかな?ルイーシュ君。

「だけど俺は、魔法が使える以外、他に特技なんて何もない。だから、魔導師以外の何者にもなれない」

「キュレムさんの特技…。あ、そうだ。カップ焼きそばの湯切りは、右に出る者のいない実力だと思いますよ」

「うん、ありがとうルイーシュ。ちょっと黙ってろ。な?」

それは特技とは言わないんだよ。

…え。マジで?俺、湯切り上手い?

不覚にも、ちょっと嬉しい。